第28章 1 years later①
「お花・・・?」
確かさっき新聞を取りに来た時はなかった、
白い花束がそこにあって・・・
私はゆっくりと数段の階段を降りてその花束の側まで行く。
まるで空に流れる白い雲を切り取ったような真っ白な花は、
ナズナと・・・白いこれはアイリス、かな?
白のアイリスを囲うように小さなナズナが沢山添えられている。
珍しい花束、でも、可愛い・・・
それを手に取って、門扉から身を乗り出して家の前の道に、誰かいないか見回す。
でも、左右見ても・・・誰も、いない。
イタズラかな、と思いながら乗り出した体を引っ込めた時・・・
門扉についていた右手の隣に、後ろから伸びた手が添えられる。
え・・・?
同時に、花束を持っていた左手を、後ろから誰かに包まれるように握られた・・・
振り向く間もなく、背中に感じる・・・温もり・・・
そして・・・
「ナズナと、白いアイリス・・・2つの花の花言葉、知ってる・・・?」
耳元で囁く声・・・
私は前を向いたまま、目を見開いた・・・
この声、いや、でも・・・まさか・・・
「ナズナは、
"あなたに私のすべてを捧げる"・・・
白いアイリスは、
"あなたを幸せにします"・・・なんだってさ」
ありえない・・・そんなことって・・・
でも、聞き間違える筈がない、この声は・・・
「こっち向いて、りお・・・。俺、お前に言いたいことあるって、言ったよね?」
その手が私の肩に触れて、ゆっくりと振り向かせる・・・
そして私は、優しい陽の光に照らされたその人を見つけた・・・
「及・・・川、さん・・・?」
彼は・・・私の大好きな笑みを浮かべて目の前に立っていた。
白いシャツを着て、柔らかな表情で私を見ている。
今まで画面越しにしか触れられなかった及川さんが、今目の前にいる。
「りお・・・」
今まで画面越しにしか聞けなかった及川さんの声が、こんなに近くで聴こえる・・・
彼は・・・彼は今、ここにいる。私の目の前に・・・
及川さんは、にこっと笑って、
それから、すうっと息を吸いこんだ。
「俺・・・俺の全部をかけて、お前のこと、幸せにする・・・」
大きくて優しい手が伸びて、私の頬に触れる・・・
そして・・・