第25章 Winter memory⑥
「偉く余裕なんだね」
「え??」
「また及川さんのファンが増えたってことだよ。ファンレターの数も、リーグ前より倍増してるし」
・・・・・・あ。
すっかり忘れてた。
「そっかぁ〜、そりゃそうだよねぇ・・・」
及川さんはそんなつもり無くプレーしてただろうけど、あんだけかっこいいことしちゃったら、ファンが増えない訳、無いよね・・・。現にさっきも会社のお姉さま方に囲まれてたし。相変わらずヘラヘラしてたのにはもう腹が立たなくなったけど。
勝ったことは凄く良いことなのに、
恋のライバルが増えるのは何か複雑・・・。
しょぼんとあからさまに肩を落とす私を見下ろして、国見くんがまたクスリと笑った。
「・・・でも」
ぽん、と国見くんの手が肩に置かれる。
へ?と不思議に思って顔を上げると、
「こないだ試合終わったあとの北村さんたちを見たら・・・俺の相談役も、卒業かなって思ったよ」
国見くんは、笑っていた。
「え・・・?」
あのおでここつんを見られてたのかな!?
思い出してカァッと頬が上気する。
あんな人が沢山いる中で、あんなことしたら・・・
私以外の女の人だったら発狂もんだよ。
でも、及川さんはその後、何食わぬ顔で去っていくし、
家に帰ってきたら相変わらず私に意地悪してきた。
だから国見くんの言葉に、100%の喜びを示すことはできなくて・・・
「男心ってほんとわかんないよ・・・」
「男なんて単純だよ。特に、及川さんなんてほんと、わかりやすいし」
国見くんは私の額をコツンと小突いた。
「うう〜、そうかなぁ・・・」
「まぁ一言アドバイスするなら、お互いもっと素直になった方がいいよね」
うっ・・・痛い所ではあるけれど、ほんとにその通り。
私もついつい意地張っちゃうし。
「・・・検討してみます」
「そうしてください。まぁ、北村さんなら、及川さんを任せられるから」
そんな事、国見くんの口から出るとは思わなかった。
「じゃあ、そろそろチームとしての挨拶があるから、皆を集めに行くよ」
そう言って国見くんは去っていった。
国見くんも大分、表情が柔らかくなったな。リーグが終わって肩の荷が降りたんだろうなぁ・・・本当にリーグで勝つために、選手以外の人も色々な役割を担って動いていたんだと思った・・・。