第25章 Winter memory⑥
それは一瞬の出来事。
コツンと額同士が合わせられる。
長いまつ毛を伏せて及川さんは、はぁ、と息を漏らした。
私の、スティックを持つ手を包み込む及川さんの右手が温かい。
鳴り止まない歓声の中、
一番近くで及川さんは私だけに聴こえる声で言った・・・
「バレーは6人で強い方が強い・・・あの時、お前の言葉に救われた」
相手がマッチポイントをとった時、私が掛けた言葉・・・
及川さんが貫いてきた信念・・・
最後まで、その言葉通りに戦ったね・・・
「お前、やっぱり、すごいよ・・・」
そう言って及川さんは体を離し、くしゃりと私の頭を撫でた。
その手が、愛おしくて・・・
私はぽかんと口を開いたまま何も言えずに、鼓動はうるさいくらいに跳ねたまま・・・
再びチームの元へ戻っていく及川さんの背を見送った・・・