第24章 Winter memory⑤
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玄関には叔母さんと、途中で帰るタイミングが合ったのか及川さんもいた。二人で寒い寒いと言いながら足早に靴を脱ぐ。
「お、おかえりなさい」
マフラーと手袋を外して靴を揃える叔母さん。
「ただいまりおちゃん。夕飯の支度ありがとうね」
「あ、いえ・・・」
この見慣れた光景も・・・あと少しで見れなくなるんだ・・・
そう思うと私の心は深く沈んでいく。
すると、上がりかまちまで上がった叔母さんが、私の様子がおかしい事に気付き、ピタリと足を止めた。
「りおちゃん・・・?」
なるべく下を向いて、顔を見られないように俯いていると・・・
くい、と両頬に手を添えられて、やんわりと上を向かされた。
「ほーら、やっぱり浮かない顔してる。駄目よ?うちで我慢しちゃ。・・・・・・どうしたの?」
コツンと額を合わせて私の瞳を覗く叔母さんの目は、優しさで溢れていて・・・私はこみ上げる思いと共に叔母さんに抱きついた。
「叔母さ〜んっ!」
「あらっ?」
「え?」
及川さんと叔母さんの驚いた声が聞こえる。
「ちょ、どうしたの、りお」
「顔上げて?泣いてたら分からないわよ〜」
流石に驚きを隠せない及川さんと、泣きじゃくる私の背中をあやす様にポンポンと撫でる叔母さん。
この二人とお別れなんてやだぁ〜!
子供みたいにポロポロと溢れる涙を拭い、とりあえず話そうと呼吸を整える。いきなり泣いてたら、何で泣いてるのかわかんないよね。
でも、ちゃんと話そうと思えば思うほど感情が高まって嗚咽になる。
も〜やだっ、泣き止め私!
「・・・みしぃんです・・・っ」
「え?」
「寂しいんですっ、一緒に居られなく、なるのがっ」
これだけ伝えても伝わらないのは分かってる。でも叔母さんは我が子のように私の涙に濡れた頬を指で拭いてくれる・・・
触れてくれる手が温かい。
「それは叔母さんも、りおちゃんと一緒に居られなくなるのは寂しいわぁ〜。でも、どうして一緒に居られなくなっちゃうのかしら・・・」
まだ疑問符を沢山浮かべている叔母さんに、私は言った。
「・・・社宅が完成したそうなんですっ」