第23章 Winter memory④
「だったら俺が括り付けといてやろうか?」
「え?」
二人はきょとんとして俺を見た。
「どっちもお互いの絵馬見られたくねぇんだろ?括り付けてる間にお互い、絶対見に来ようとするし、だったら俺が付けてやるよ」
俺の言葉に、さっきまで言い合ってた二人はお互いの顔を見合わせた。そして暫く無言で見つめ合ったあと、息もぴったりにお互いの絵馬を裏返しにして俺に差し出した。
「宜しくお願いします」
「絶対、りおには見せないでよね!」
礼儀正しく頭を下げるりおと、絵馬を渡すのも少し不機嫌そうな及川。それを咎めるのはりおであって、やっぱり俺は、りおの存在の大きさを知った。
「分かった。じゃあ俺は括ったら生徒のとこ戻るな」
「うん、ありがとね岩ちゃん。あと、春高頑張って」
「行ってらっしゃい岩泉さん!遠くから応援してます!」
そう言って、二人は俺に別れを告げて背中を向けて歩き出した。
その背中を見送ってる時も、また何か言い合いしてるみたいだし、ほんと喧嘩が尽きねぇなって呆れつつも、あの及川と対等に渡り合える女がいることに俺は関心する。
そして俺は二人が預けていった絵馬に目を落とした。
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・はぁ。
「早くどうにかなりやがれ、馬鹿ども」
"及川さんが病気や怪我なくバレーができますように!"
"りおとずっと笑って過ごす"
絵馬にはそう書かれていた・・・
俺のため息と笑いは新年の晴れ渡る空に吸い込まれていったーーー・・・