第23章 Winter memory④
「年明け1発目はどこで試合すんだ?」
「んーと、広島!」
「じゃ、応援には行けねぇな。がんばれ」
「ちょ、もうちょっと激励とかしてよ!」
及川の方も、リーグ戦は後半戦に入ってるらしい。
年内の試合結果からは、無事に一位通過して終わってるが、
まだまだ勝負は分からない。
及川のことだ。そのチームの最大のスキルを活かして戦ってると思うが・・・去年は、バレー以外の所で色々とあったからな。
精神面が少し気にかかっていた・・・でも、
「いつも練習から帰ったらマッサージしてあげてるでしょ?練習の日は補食も用意してるし、ちゃんと応援してるわよ」
「まぁね?でもお前が地方にも応援くるならもっと楽に勝てるかもしんないじゃん?強いチームばっか相手にしてるから、気が入るんだよね。お前のマヌケな顔みて笑うのも大事だなって思うんだよ」
「誰がマヌケな顔よ!流石に広島とか福岡は遠いわよ」
・・・こいつがいるから安心か。
りおの存在が及川にとって支えになってる。
俺が埋められねぇ部分をこいつは埋められる。
正直、元嫁といる時よりもりおといる時の方があいつの顔が、あいつらしいって俺は思う。察しのいい及川自身も、気づいてると思うが・・・
「大体お前は本当に可愛げない。及川さんのファンなら地方でも海外でもついて行きます!って言いなよ」
「何よいきなり。ファンの人に失礼だしっ。大体バレーは上手なのにそのナルシストさが凄くマイナスに傾かせてるんだけど!」
「ナルシストじゃないし〜、事実だから仕方ないじゃん」
・・・何かため息が出る。
素直にならなさすぎだろ、お前。
「てかお前ら、ここで何してたんだよ。絵馬書いてたんじゃねーのか?」
収まりがつかない夫婦喧嘩みたいなもんを目の当たりにした俺は止めるように口を開いた。
「え?あ、うん」
「でも、及川さんが見せてくれないんです。俺の願いは尊いからって」
「ほんとお前はクソ川だな。1人だけ神に愛された気でいるんじゃねぇ」
「なんっで俺だけ?!りおだって何書いたか教えてくれないんだけど!?」
及川の言葉に、りおは頬を赤らめた。
まぁなんとなく、りおがなんて書いたのかは想像つくが・・・。