第22章 Winter memory③
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それから暫くお酒を飲んだ後、私たちはそれぞれ帰路についた。
私が岩泉さんからもらったスポドリ2リットル2ケースは、やはり後日、及川さんが車で取りに行ってくれることになった。
お酒が程よく回り、気持ちよく夜道を及川さんと並んで歩く・・・
心地よい沈黙の中、私は今日の楽しかった時間を思い出して余韻に浸っていた。
「ほんっとアイツら、ここぞとばかりに俺の顔に落書きすんだから。タオルで擦りすぎて顔痛いし」
及川さんはひりつく頬をさすりながらブツブツと文句を言っている。
「でも、本当に楽しかった。あぁいう、ワイワイして飲むの久しぶりだったし」
みんな気を遣わない、遣わなくていい関係での呑みは本当に楽しい。ずっと笑ってたな。及川さんも、ほんとずっと楽しそうだった。
「まぁね。あいつらほど馬鹿みたいに騒げるヤツらいないから」
岩泉さんも花巻さんも松川さんも・・・
みんな良い人で優しくて、
及川さんが苦しい時に支えてくれてたんだろうなって感じる。
家族も同然なんだろうな・・・
仲間って・・・絆っていいな。
「毎年クリスマスはこうして呑んでるの?」
「いや?そうでもないよ。毎年クリスマスは、前妻と二人きりで過ごしてたから。付き合ってた時もね」
前妻・・・そっか・・・そうだよね。
及川さんにはその時、あの人が隣にいたんだ・・・。
もう、過去の人、そう思ってるのかな。
私の複雑な心境とは裏腹に、及川さんは満足気に微笑んだ。
「まっ、ホントは俺みんなとああやって馬鹿騒ぎする方が好きなんだよね」
それは本心であることが、余韻に浸る横顔から見て取れた。
そうだよね・・・あんなに素晴らしい仲間がいるんだから。
「お前にも、その場所にいて欲しかったから」
ドキン・・・と心が動く。不安が消し去る。
「うん・・・連れてきてくれて、ありがとう」
好きな人が幸せって思える空間にいることが、どれだけ幸せか分かる。
だから、あなたと同じ空間をこれからも共有していきたいって・・・
そう思った。