第22章 Winter memory③
「そうだ・・・りお」
公園の角を曲がる時、及川さんが急に立ち止まった。
「手出しな?」
「え・・・?」
「早く。出さないとあげない」
街灯の下、及川さんの綺麗な瞳が私を真っ直ぐに見つめている。
私は疑問符を浮かべながらおずおずと両手を差し出した。
するとその手の中に・・・
「クリスマスプレゼント」
「え・・・?」
ちょこんと、可愛らしく乗った小さなクマのぬいぐるみ。
その小さな手の中には、小さな指輪があった。
大きさからして、ピンキーリングだった。
「これ・・・」
「いつもありがとって意味だから!他意はないからねっ」
照れてマフラーで口元を隠しちゃう及川さん。
私は嬉しくて・・・クマのぬいぐるみから指輪を取り出した。
私の小指にすっぽりと嵌ったその指輪には小さなダイヤが埋め込まれていて、私は彼の顔の前に手を開いて指輪を見せた。
「どう、かな・・・?」
「・・・別に、いいんじゃん?俺から貰ったからって舞い上がり過ぎないでよね」
すぐにそっぽ向いてしまったけれど、私の為にこの指輪を選んでくれた彼の姿を想像すると愛おしい。
いつもは意地悪だけど、大切な高校時代の仲間の中にも入れてくれたり、本当はすごく優しいんだよね・・・
「うん・・・」
そう返事はしてみるものの、やっぱり嬉しさは滲み出てしまうなぁ。
「あ、私も・・・及川さんに用意してるんだけど、家にあるんだ」
まさか逆に及川さんから貰えるなんて思ってなかったけど。
「帰ったら渡すね?」
「ふ〜ん。じゃあ、間に合わせでいいからさ・・・」
不意に、及川さんの手が伸びてきて・・・
「こうしてよ」
及川さんの手が、私の手を取る。
「・・・いい?」
こんな時に、赤い顔してそんな事聞くなんてズルい。
「・・・・・・うん」
そう言わずには居られないよ・・・
手袋越しに伝わる体温。
大きな大きな、愛しい人の手・・・
クリスマスマジックでも、ただの気まぐれだったとしても、
この時間が幸せで溢れていて・・・
月だけが手を繋ぎ寄り添って歩く私たちを見守っていたーーー・・・