第22章 Winter memory③
「結構頻繁にあり、ます・・・」
近くに及川さんの気配がないかキョロキョロと辺りを見回す。
すると松川さんは穏やかに微笑んでくれた。
「あいつ、興味のある奴にしかちょっかいかけないから。根は良い奴なんだよ」
「そうそう。大体女の子相手だったら正直笑ってあしらうのが及川の対応なんだけどな。岩泉に聞いたら、あんたはどうもそうじゃないらしいじゃねぇか」
へ・・・・・・?
どきんと鼓動が脈打つ。
「や、でも・・・私は・・・」
赤くなってクリームを塗る手が止まる。
「まぁまぁ、そう畏まらなくていいから・・・これからも、あいつのこと頼むな?」
くしゃくしゃと私の頭を撫でてくれる花巻。お兄ちゃんみたいで、なんだか落ち着くな・・・
「ちょっとまっきー!なぁにりおに手出してんの!」
と、そこへ白菜を片手に持った及川さんが何故か怒った様子で入ってきた。
「可愛い妹みたいだからな。普段独り占めしてんだろ?たまにはいいじゃねぇか」
そう言って私の頭を撫でる手が何故か激しくなる。
「それ、俺のからかい相手だから!勝手に遊ばないでくれる!?」
お気に入りのおもちゃを取られた子供みたいに、まゆを釣り上げて及川さんは私を引き寄せる。
「子供か」
松川さんが率直に言い放つ。
「なんと言われようと、りおに手出しできんのは俺だけなんだからね!」
・・・そんなこと決まってないのに。
まぁそんな子供っぽい所も可愛いなんて思ってしまう私はかなり、重症だと思う。
「てめぇ、及川。野菜切んのほっぽりだして何やってんだ」
続いて鬼の形相の岩泉さんが来て、持ち場を離れた及川さんの首根っこを捕まえる。その拍子に私を抱き寄せた腕が緩む。
「ぐぇっ」
何ともマヌケな声を漏らした及川さんはあっさりと捕まる。
そのまま岩泉さんに引き摺られるようにしてキッチンへと戻っていった・・・
そんな二人の様子を見て、花巻さんも松川さんも笑ってる。つられて私も吹き出した。
なんか、いいな。こういうの。
4人とも、本当に仲良しなのが伝わる。それは高校3年間、泣いて笑って苦しいことも沢山一緒に乗り越えて生まれた絆があるからだろうな・・・。
そんな目に見えない繋がりを感じ取れる程に、この4人の間にある空気は温かかった。