第22章 Winter memory③
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及川さんもさっきと打って変わって本当にラフな格好だった。白のパーカーにジーンズ。ま、何着てても似合うって思うのは私の贔屓目のせいなのかな。
私も彼に負けじと?ボルドーカラーのセーターにスキニー姿なんだけど。
そんな珍しい格好の及川さんと私はジャケットを羽織り、イルミネーションに彩られた街並みを見ながら並んで歩く。
「今日のデートはどうだった?楽しかった?」
信号待ちをしている時、及川さんの横顔を見ながら私は尋ねた。
「ん〜、まぁ喜んではくれたんじゃない?話上手だったし、退屈はしなかったよ」
「そっかぁ〜」
大好きな選手とコネでもデート出来て、相手側の人もご機嫌だっただろうな。
プレゼントとかも、貰ったのかな?
「言っとくけど、プレゼントはお互い用意しないって約束してたから」
「へ?何で?」
きっと及川さんには、物凄いプレゼントしそうなのに。及川さんも、女性の喜ぶものなんて知り尽くしてるから薔薇の花束から始まり、素敵なプレゼント用意してそうなのに。
「前からファンで居てくれてるし、自転車とか旅行券とか、びっくりする贈り物とか数えきれないくらい貰ってんだよね。だから今回もすんごいの用意してくれそうだったから、流石に申し訳なくて断った」
そうなんだ。それは流石に断っちゃうよね。やっぱりセレブって贈り物も凄いんだなぁ。
でも、折角念願の及川さんとのデートが叶ったんだしクリスマスプレゼントも、渡したかっただろうな・・・
「だからご飯だけ、ご馳走させて貰ったよ。いつも貰ってばっかだったしね」
「なるほど・・・」
どんな所行ったのかな?イタリアンとか?
御令嬢はどんな人か見たことないけど、モデルやってるくらいだし凄く綺麗なんだろうな・・・
美男美女ってご飯食べるだけでも絵になるんだろうなぁ・・・なーんて、考えていたら及川さんに頬を摘まれた。
「いひゃい。」
何も悪いことしてないのに・・・。
不思議に思って、頬を摘まれたまま及川さんのことを見つめた。