第21章 Winter memory②
「やめといた方がいい」
「っ・・・」
一歩、女性たちの輪の中へ足を踏み入れようと動いた足が、国見くんの言葉で止まる。
国見くんを見上げると、無表情の中に、微かに怒る感情を秘めた瞳が見えた。国見くんも、一緒の思いなんだ・・・
「勝手に言わせておいたらいい。及川さんは彼女たちに分かってもらいたい訳じゃない。・・・北村さんだけが本当の及川さんのこと分かってあげたらいいんじゃない・・・」
本当の、彼のこと・・・
「及川さんはみんなに優しいし、友人も多いけど、本当に理解してくれる人はほんの少しでいいって思ってるよ。岩泉さんとか・・・北村さんがそうであって欲しいって、きっと思ってる。何か心当たりはない?」
国見くんの言葉に、私は胸に手を当てて考えた。
私自身も・・・薄らと気づいてた・・・
あの夏から少し・・・ほんの少しずつだけど、
及川さんの中で変化があって・・・
私が彼に踏み込んでいけた気がする。
幾度となく繋いだ手からは熱以上の思いが、垣間見えて・・・
私が彼に近づいていくのを、許してくれた気がした・・・
その感情に、私が名前を付けるのは、筋違いだし本当のことは及川さんにしか分からない。
だけど、そんな及川さんのそばにこれからもいたいって思うし、いさせてほしい・・・
「頑張るんじゃ・・・なかったの?」
国見くんが私を試すような視線を送る。
そうだ。私は他の女の子のことを気にしてたって始まらない。他人と比べて、及川さんの気持ちが動くわけでもない。
どれだけ及川さんの事をわかってあげられるか、わかってあげたいと思うか・・・私自身が決めることだよね!
「・・・うん!」
私は心がすっと晴れていくのを感じた。
私にしかできないこと、きっと沢山あるよね。
そんな様子の私を見て、国見くんが微笑んだ。
「私、頑張るからね!国見くん!」
「・・・ほんと、及川さんが時々羨ましくなるね」
「え・・・?」
目を点にする私の額を、国見くんはコツんと小突いた。
「・・・独り言だよ。また何か悩んでたら、いつでも聞いてあげるよ。相談料は・・・塩キャラメルがいいな」
「わかった!じゃあ今度美味しい塩キャラメル箱買いするね!」
「って・・・どんだけ相談するつもりなの」