第21章 Winter memory②
ーーー・・・
「私って何様なんだろうぅぅぅー」
「夕方はあんなに上機嫌だったのに、また落ち込んでんの?ほんと忙しいね」
サイン会、握手会。撮影会も無事に終わり、選手主催のビンゴゲームの最中のパーティー会場の壁際で私は頭を抱えて本音を漏らす私と、そんな私を腕を組みながら見下ろす国見くんがいた。
だってだって・・・
及川さんがモテすぎてて嫉妬するなんて、私は及川さんの彼女でも何でもないのに・・・
及川さんに群がる(失礼)女性が多すぎるから、
何処か焦っている自分がいる・・・
「北村さんは他の女の子が味わえない体験いっぱいしてると思うけど」
「そ、その言い方は少しエロい気が・・・」
「何言ってんの」
「あ、ナニモナイデス」
ギロっと国見くんに睨まれて体を小さく丸めた。
すると・・・、
「及川さん、結婚したって聞いてたけど指輪してないわね?」
「あら?知らないの?もう別れたって話よ!」
「えー!結婚してたの?それに破局も早いわね!」
「どこの人?その話、噂で聞いたことあるけど、本当だったのね!」
「っ・・・!!」
近くでワイングラスを片手に持った女性たちの会話が突然耳に入り、どきりと胸を鷲掴みにされた感覚になる。
「なーにー、もう及川さんって人のモノだったってこと?」
「らしいわよ。でももう独り身になるなんてねぇ」
「何か訳ありだったのかしら?奥さん不倫とか?」
「やっだぁー、及川さんって言う完璧な旦那がいながらそれはできないでしょ!」
ぎゅっと無意識に拳に力が入ってしまう・・・
「及川さんも、バツが付いちゃったけど、きっとすぐ恋人もできるわよね」
「そうね〜。離婚しても、あんな風に笑えてるんだから、まだ夫婦になるには精神的に若かったと思うわ〜」
口々に喋る女性たち。
何も知らないから、何でも言えちゃうんだよね。
・・・及川さんのこと。
あんな風に笑えてるって・・・
それはあの夜の涙を知らないから。
夫婦になるには心が若いって・・・
本当にその人と結婚したかったから覚悟を決めて選んだに決まってるのに・・・
言ってやりたい。あなたたち、及川さんのこと知らなさ過ぎてるって・・・