第21章 Winter memory②
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及川さんは女性にモテる。
それはバレーでのずば抜けたプレー以外にも魅了するものがあるから。
整った顔立ち。
笑うと下がる目尻とか、鼻筋とかもすーっと通ってる。
背も高いし、何よりあの気さくな感じ(ただ女の子にちやほやされるのが好きなだけだとと思うけど)が、世の女性たちを魅了してるんだろう。
性格はどうあれ、ルックスは全てに置いて神様に愛されたように完璧。
だから、恋のライバルは、社長令嬢だけじゃなくって・・・
「及川さん、やっぱりかっこいいわぁ」
「スーツも似合うし本当、目の保養よ」
「はぁ〜、あの胸板に抱かれたい〜」
・・・他にもたっっっくさん、いる訳で。
今日は、及川さんの所属する実業団チームの、ファン感謝祭と言う名のパーティー。私はホールスタッフのお手伝いとしてこの会場に呼ばれた。
一般の方も沢山参加できる立食パーティーで、選手によるサイン会は勿論、握手会や写真会などもある。つまり選手の皆さんは大忙しな訳で。
そんでもって、チームの顔とも言える及川さんはありとあらゆる所で名前が呼ばれて、もっともっと大忙しな訳で・・・。
それでも笑顔(営業スマイル)を崩さずに何でもしてあげちゃう及川さんは、もう芸能人のようだった。
ファンの事も大切に思ってるんだろうな。
応援してくれないと、バレーボールできる環境だってなくなっちゃうんだから・・・
でもだからって、
「すみませーん!写真撮って下さい!」
「あ、お姉さん私も私も!」
モテすぎ!しかもなんで私がいつの間にかカメラ係になっちゃってるんだろう!及川さんもにこにこしてばっかりだし、いや仕方ないって分かってるんだけど・・・
「は〜い、撮りますよ〜」
綺麗にお化粧して、お洒落な私服を身に纏う女の子に腕なんか組まれて笑う及川さんを撮るのは、やっぱりなんだか胸がモヤモヤする。私なんて洒落っ気の欠片もない黒いスーツだし。完全に差を感じる・・・。これって、ヤキモチなのかな・・・。