第20章 Winter memory①
「起きたの。熱は?」
「うーん、さっきよりは下がったと思う。体だいぶ楽だし」
言いながら、及川さんが隣にいるのに普通に爆睡できる私ってある意味凄いなって思った。
普通は男の人といたら意識して眠れないとかするもんじゃないのかな・・・自分の事だけど、何かおかしくて笑っちゃった。
「何笑ってんの。元気になった途端、にやにやして、変なやつ」
及川さんは、げっ、とでも言いそうな顔をして私に言った。
「ちょ、そんなにやにやしてないしっ」
「いーやしてるね!てか、いつから起きて俺のこと見てたの、りおのえっち!」
えっち!?言い方古くない?!
「えっちじゃないし!別に及川さんのこと見てた訳じゃないし、勘違いしないでよねっ」
見てたけど・・・私は断じてえっちじゃない!
及川さんはパソコンを置くと、両手を広げてゆるゆると首を振った。
「いやぁ〜わかる、大いにわかるよ?俺に見とれちゃうの。だって俺、こーんなにスタイルいいし顔も整ってるし?毎日一緒にいても見飽きないよねっ」
「・・・・・・・・・」
な、わ、け、な、い、で、しょ!
と、突然ナルシストモード全開な及川さんに、私は白い視線を送った。
「なーに、その目。ちょっと元気になったからって生意気じゃない?」
ぎゅむーっといつもよりも強く頬を摘んでくる。
早く治せって言ったの及川さんじゃない!?
「いひゃいいひゃい!はなひへ〜!」
「ぷっ。ほんと面白い顔してるよね。いい気晴らしになるよ」
ほんと失礼!意地悪!ナルシスト!
お返しとばかりに私も及川さんの頬を思いっきり抓った。
「いっでででででで!!」
「ぷっ」
頬を引っ張られて痛みに顔を歪める及川さんの顔も、普段見れないくらい崩れていて、二人して痛いのに笑いが込み上げてくる。
あぁ、くだらない。くだらないけど、楽しい。
バレー選手だけど、彼は彼。こういうふざけたことして、彼と笑い合って、幸せだなと思う。
彼が元気が無いって悩んでたけれど、こんな些細なことでも笑える事に気づいた。こんな簡単な答えがあるんだから、私は考え過ぎず、ありのままで彼の近くにいたいと思ったーーー・・・
※因みにこのあともギャーギャー騒いでいたら叔母さんに怒られた。主に、及川さんが。