第20章 Winter memory①
りおside
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次に私が起きた時、部屋の景色は何一つ変わってなかった。
10時くらいから寝始めて、時計を見れば昼の1時を回ったところ。
3時間でもぐっと質の良い睡眠を取れば体って楽だなと思っていると、視界の端に彼の姿を見つけた。
彼もまた、数時間前と殆ど変わらない膝を抱えた姿勢でパソコンを見ていた。
ヘッドフォンをつけて、食い入るように見ているのはバレーの試合だ。白のユニホームに見覚えがある。及川さんのチームの・・・昨日の試合かな?真剣に見ている横顔は、普段の及川さんのおちゃらけた顔ではなく、バレーボール選手としての及川さんの顔だった。
静かに、ただ、静かに映像を見ているその目にはバレーボールってどう映ってるのかな。
私にはないバレーのプロの素質。
私には完全には理解しきれないその頭の中・・・
常人にはないバレー選手としてのセンスを抜群に活かしている及川さんだから、きっとそこに惹かれる人が多くいる・・・。
カリスマ性ってやつなのかな。
でもきっと、それは努力の上で成しえた事なんだって思う。
こんなに長い間、1つのことを極めるって、
好きでいることって楽じゃない。
人並みの言葉しか出ないけど、凄いって思う。
色んな怪我やスランプがあったり、人間関係、時には環境にだって惑わされたりする中で・・・一つのボールで、一つの勝利を目指して、一心に努力するって簡単な事じゃない。
だけど、いつか及川さんが言ってたな・・・
バレーをしてない自分が考えられない。
だから自分の納得のいくバレーを終えるまで、俺は終われないって・・・
綺麗な見た目の人って、淡白とか、冷たいとか、あっさりしてるイメージがあるけど・・・
及川さんは見た目に180°反してる。
誰よりもバレーが好きで、ひたむきで、本当は熱くて、努力する人・・・相手の研究だって、自分の研究だって怠らない。
一緒にいると、外で会う彼からは見えない部分が見える。
多分、他の人が知らないような彼の姿を、私は知ってる・・・
そんな彼だから、バレー選手としての彼自身のことも、応援したくなるんだよね。
そんな風に見つめていると、やっとその視線に気づいたのか、及川さんはイヤフォンを外して私を見た。