第20章 Winter memory①
及川side
ーーー・・・
昨日の晩、遠征から帰ってきたらりおは赤い顔でおかえりを言ってきた。どこかふわふわした言動で様子もいつもと違ったから、体に触れてみるとびっくりするほど熱かった。
"風邪じゃなくてちょっと寝付きが悪いだけだからっ"
と言って病院には行かないりおに、何で寝不足なのか聞いてみた。俺のことを見て、言葉を濁すりおに理由を詰め寄ると、どうやら俺が元気がない様子を見て、自分に何か出来ないか考えていた、らしい。・・・はぁ。
考え込んで三日も寝れない!?
お前どんだけ俺のこと好きなんだよ!
・・・って、俺の隣で子供みたいな顔して眠るりおを見て思った。
ほんとさ・・・
「馬鹿だよね・・・お前って・・・」
他の女の子みたいに、何も知らないまま、
きゃー!及川さーん!とか言ってるだけでいいのに・・・
何も傷つかずに、ただの従姉妹でいれば・・・。
なのにこんなに踏み込んじゃってさ。
って・・・俺が踏み込ませたのかな?
兎に角、ただの女の子なら・・・
こんなに特別な感情、抱かなかっただろうな・・・
人混みの中でも、その存在に気付かずに通り過ぎてしまえたのに・・・
今じゃいつだって、お前のそそっかしい姿探してる、
なんて、口に出して言ってやんないけどさ。
でも、そんなお前に俺は心配かけてたんだね。
お前がそんな風に見てたなんて知らなかった。
ほんと、お前は俺を孤独にさせないのが上手いよね。
参ったよ・・・
「いつまでもくよくよしてらんないよね・・・」
思い出はあの夜に、全部置いてきたから。
俺にはバレーがある。リーグも始まった。
プロとしてバレーに専念できる俺は、
俺のやるべき事を、全うしなくちゃ、ね・・・
そう思って、俺は座椅子にもたれ掛かってノートパソコンで昨日の試合の映像を見始めたーーー・・・