第19章 Autumn memory⑤
ーーー・・・
及川さんが家を出て行って・・・時計の長身はかれこれ3回、同じ所を回っている。
夜も更けて、私はテーブルに顔を伏せて及川さんの帰りを待っている。
(電話・・・してみようかな・・・)
でも、まだ色々と話し合う事があったりしたら邪魔しちゃうし。
もう少し・・・もう少しだけ待ってみよう、そう思ってから、再び針は2度同じ所を指した頃・・・
ガチャ・・・
「!」
鍵の解錠する音が聞こえて、ばっと顔を上げた。
「・・・っ・・・・・・」
私は弾かれたように椅子から立ち上がり、パタパタとスリッパを鳴らして玄関へ向かう。
一秒でも早く、会って顔が見たかった・・・
「及川、さん・・・?」
待っていた彼はそこにいた。
こちらに背中を向けて、靴を脱いでいる。
そうしてくるりとこちらを振り向いて・・・
「ん?あぁ、・・・ただいま」
いつもと変わらない笑みを浮かべた。
「・・・・・・・・・!」
彼だ。ちゃんと・・・、ちゃんと話をつけて終わりにしてきたんだ。
帰ってきてくれたんだ・・・
「おかえりなさい・・・」
ホッとしてるのか・・・よくわかんない感情のまま、彼を見つめていると、ぽんと頭の上に手を置かれた。
「なんだ、こんな時間だし、先に寝てて良かったのに。だから、帰るって連絡入れなかったんだよ」
「オ・・・オムライス作って待ってるって約束したから・・・」
「はは・・・そうだった。じゃあ、早速食べよっかなぁ。俺もうお腹ペコペコだよ」
彼はいつもの日常と同じような会話をするから・・・
私は色々と覚悟していたものが無くて拍子抜けした。
普段通りの彼すぎて・・・
「ん、分かった・・・じゃあこれから卵焼くから・・・先にお風呂入ってた・・・」
だから私も普段通りに接しようと務めることにした・・・
ーーー・・・
「うまっ!やっぱりお前の作るもんって美味いな」
「そ、そうかな・・・普通なものしか作れないんだけど」
「何、急に控え目な態度とってんの。でっしょ〜私天才だから♡っていつもみたいに言いなよ」
「・・・いつも、そ、そんなキャラじゃないし・・・」
あぁ〜だめだ、全然いつも通りにできてない!
ぎこちない〜!
及川さんがこんなに自然体でオムライス頬張ってんのに!