第19章 Autumn memory⑤
《Autumn memory⑤》
及川side
ーーー・・・
愛を忘れるには愛で埋めるしか無いって誰かが言っていたけど、
俺は"彼女"を愛したことをこれからも忘れられないと思う。
だって・・・
"俺と・・・結婚してください"
初めて、生涯を共にしたい、心からそう思えた人だから。
Vリーグの会場で、うちのチームのグッズの売り子をしていた彼女。その明るい笑顔に俺は惹かれた。
付き合い始めれば毎日が楽しくて、幸せで・・・
この人しかいない。そう思ったから指輪を片手に、今まで誰にも言ったことのない言葉を口にした。
指輪を見た時の彼女の笑顔・・・そして涙は今も鮮明に覚えてる。
どんな宝石よりも綺麗だった。
この笑顔をずっと守っていきたいと、そう思った。
でも、月日が経った今・・・
"及川さん!!"
不思議だよね。孤独になったと思ってた俺の心のど真ん中には、違う笑顔があるんだ。ずっと消えない光のように俺の心を癒し、照らしてくれてる・・・
りおが・・・俺に触れてくれたから、
いつだって側にいてくれたから・・・
俺はまた、前に進もうとしてる・・・
1人じゃ、ここまでたどり着けなかったな。
もっと自暴自棄になって、馬鹿みたいに酒飲んで、
誰彼構わず抱いて・・・
いい歳して荒れていたかも・・・
恥ずかしいけど、泣いてすがってたかもしれない・・・
あの日、あの時、あの場所でりおに出会えた時から・・・
未来は変わっていったんだろうな・・・
だから、俺はもう大丈夫。そう言える。
俺は、意を決して・・・電話をかけたーーー・・・