第18章 Autumn memory④
「ば・・・」
「・・・ば?」
「晩御飯っ、何がいい!??」
勢い良く言った。
ご飯を作って待つ。それが、私に出来る唯一のことだと思ったから。
「・・・・・・・・・」
及川さんは面食らったように固まったけれど、やがてぷっと吹き出した。
「ふふ・・・ははは、やっぱ凄いよ、お前」
もう一度私に手が伸びる。伸ばされた手が、私の頭をぽんぽんと撫でる。
「オムライス。卵ふわふわなやつね」
"ちゃんと、帰ってくるから・・・"
そんなことを言ってる気がして、私は鼻の奥がツンとなるのを感じた。スっと手が離れていく。
「うん、行ってらっしゃい」
いつもの土曜日、彼を練習に送り出すときと同じように・・・
まるでそうであるように、私はいつも通りに彼の背中に言葉をかけた。
「行ってきます」
そうして、彼は闇の中へと消えた・・・
でも、大丈夫。
もう、見失わないよね。
ちゃんと・・・、
ちゃんと私、待ってるからねーーー・・・