第18章 Autumn memory④
とくん、とくん、と及川さんの鼓動を感じる。
今ここで強く生きている彼を、感じる・・・。
「お前が、塞ぎ込みかけてた俺を日なたに連れ出してくれた。お前の笑顔がいつもあったから・・・俺はお前に、救われてたんだ・・・」
「及川さん・・・」
「今回の旅行を計画したのも・・・お前を沢山笑顔にして、その笑顔に、最後の後押しをしてもらいたかったからなんだよ・・・」
私に・・・?だから、色んな楽しいことを計画してくれたの・・・?
「沢山勇気貰った。だから、俺・・・行ってくる」
"もう、怖くないから"
再び及川さんの腕が離れる。
気づけば、背を向けて外へ出ていこうとする及川さんを見て、我に返った。
「待って!」
ぴたりと及川さんの足が止まる。
振り返る、大好きな人・・・
彼に、何ができる?
突然で驚いたけれど・・・
今、覚悟を決めて奥さんに会いに行く彼に・・・
大好きだった人にさよならをするって・・・
相手の人は簡単に出来ても、
及川さんには、私の想像出来ないくらいの勇気がいるはず・・・
そんな事をしに行く彼に・・・私は今何ができるんだろう。
必死に頭を巡らせた・・・
好き・・・?違う。
頑張って・・・?違う。
気をつけて・・・?違う。
私が・・・私だけが及川さんにしてあげられること・・・