第18章 Autumn memory④
けれど、それはすぐに一変した・・・
ーーー・・・
車から降りて、数日ぶりの我が家の前に立つ。叔母さんは今日も夜勤か。電気が付いてない。
私は大量のお土産を両手に持っていたから鍵が出せず、及川さんにお願いした。
鍵を開けて貰って、雪崩込むようにお土産やら荷物などを玄関の上がりかまちにドサドサと置く。
「ふぅ〜、ただいまで〜す」
まだ電気もつけていない暗がりの中で私は言った。
流石に暗いから何も見えないな・・・
「え〜と電気電気・・・」
手探りで電気のスイッチを探していると・・・
グイッ
「へ・・・?」
突然抱き込まれた。
及川さんの腕の中に・・・
頬に密着する、及川さんの逞しい胸板。
優しく閉じ込められたその腕の中で、私は何とかして及川さんの顔を見ようとしたけどきゅっと抱き込められて叶わなかった。
どうして・・・
「及、川・・・さん・・・?」
突然様子の変わった彼に戸惑いを隠せない。
「りお・・・俺・・・」
私の耳元で、及川さんは呟くように言った。
「ケジメ、付けてくる・・・」
「え・・・?」
「嫁に会って、書いてくる。・・・・・・離婚届・・・」
その声は、震えていた。
私は理解するまでに時間がかかった。
あまりに唐突すぎて・・・
「顔・・・見せて・・・」
及川さんの顔が見たくて、どんな顔をしているのか、知りたくて・・・
するりと抱きしめていた腕が緩められて、パチンと電気が付けられる。
突然の眩しさに目がくらんだけれど、
改めて捉えた及川さんの表情は・・・
「あ・・・・・・」
震え混じりの声とは裏腹に、
あの雨の日の傷ついた表情ではなかった。
決意した・・・覚悟を決めた顔つきをしていた。
「大丈夫、なの?」
こくんと、確かに及川さんは頷いた。
「ずっと、答えを出そうとしてた。向こうの子供のこともあるし・・・時間が迫ってるって焦ってた」
及川さんは口を開いた。
「でも焦れば焦るほど心は虚しくなっていって・・・書けば終わる、終わるけどそれからの俺は、どうなるんだろうってずっと不安だった・・・だけど」
及川さんは私を引き寄せてもう一度抱きしめた。
「いつも、お前がいてくれた・・・何も言わずに、ずっと」