第18章 Autumn memory④
おやつの中身は、ゼリーで、これなら歯のないじいちゃんも食べやすい。
りおにスプーンでよそって食べさしてもらっているおじいちゃんは心底幸せそうだった。
「いい嫁さんじゃねぇか。俺は目は見えないけど、声や仕草でわかるぞ・・・」
「へ?嫁?何の話?」
俺たちの話を聞いていなかったりおは首をかしげた。
でもそれ以上は、じいちゃんも俺も、何も言わなかった・・・。
「ねぇ、何、及川さん」
「なーいしょ。」
「もー、教えてよ〜」
頬を膨らませるりおだけど、ごめん、今回だけは・・・教えてあげない。
心の優しい人・・・
自分の帰る場所・・・か。
「あぁ〜、あいつに会いてぇなぁ・・・」
「ど、どうしたの?おじいちゃん」
りおは首をかしげている。それを見つめながら俺は思った。
当たり前の幸せなんて、ひとつもないんだよね。
こいつの思いやりがいつも、俺を支えてくれてるんだ・・・
不倫された嫁に離婚届突きつけられて本当に苦しかった時も、
こいつは俺を受け止めてくれた。
俺の母さんや・・・母校の青城の高校生にも優しくしてくれた。
俺の誕生日を祝ってくれた。
夏祭り、繋いだ手を離さないでいてくれた。
俺のために、こいつがしてくれたことは数えきれない・・・
あぁ、こういう人を俺は大切にしなくちゃいけないんだ。
当たり前のようにそばにいるけど、当たり前じゃないんだよね。
こんなにも俺を思ってくれる人は
りおしかいない・・・。
俺は、りおに救われてるんだ。
分かったよ、じいちゃん・・・。
大丈夫。
俺ーーー・・・