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おかえり〜I'm home〜(R18)

第18章 Autumn memory④





「顔も大して可愛くはなかったんだけどな、気立てがよくてな、優しい女だった・・・」

「へぇ・・・」

「大家族の長女でな、家事全般はちっちゃい頃からやってたあいつの作る飯は、どれも美味かった・・・。

俺はな、初めてあいつの作る筑前煮食った時、思ったんだよ。
あぁ、こいつは俺のために時間を割いて、こんなうめぇ料理を作ってくれる優しいやつなんだってな。すぐ、結婚を決めたよ」

「え、そんなすぐ・・・?」

ご飯を食べただけで・・・?
うん、とじいちゃんは頷いた。

「結婚してからも、あいつは毎日美味いもんを作ってくれた。・・・料理作ってくれるってな、当たり前のことじゃないんだ。手前のことだってあんのに、仕事ばっかで家のこと、何一つしない俺の帰りを、美味いもん作って、娘らと待っていてくれてる・・・あの時は当たり前だと思ってたけどよ、今思えば・・・幸せだったなぁ・・・」

じいちゃんは懐かしむように空を見上げた。その目に何が映ってんのかわかんないけど、空よりずっと遠くの方にいるばあちゃんを見ているようで・・・

「あいつの他にいなかったなぁ・・・。頑固な俺のこと叱ってくれたり・・・どんだけ喧嘩してあいつを泣かせて家を出ていっても、ちゃんとおかえりって迎えてくれたのは・・・家族ってもんを大切にしてくれたのは・・」

じいちゃんは、俺の方を向いた。
昔よりもうんとシワの増えたその顔は、和やかだった。

「お前さん、名前なんて言うんだ・・・?」

「・・・徹だよ」

「徹か・・・良い名だな」

うん、そりゃあね。あんたが付けてくれたって聞いたよ。

「徹、おめぇ今、結婚してんのか・・・?」

「・・・・・・うん」

一応は。

俺の表情が曇ったことに気付かずじいちゃんは話し続けた。

「あのな、徹・・・おめぇ今幸せか?・・・女はな、どんだけの美人でも心が優しい人じゃないと、駄目だぞ。どれだけ喧嘩してもな・・・おかえりって言って安心させてくれる人がいい。・・・自分の帰る場所なんだからよ、嫁さんは」

帰る場所・・・俺にとって帰る場所は・・・


ガチャ・・・


「おーい、おじいちゃーん!」

中庭に、りおが入ってきた。ちゃんと花を生けてきたんだろう。代わりに手には、

「おじいちゃんのおやつ、預かってきたよ〜」

じいちゃんのお昼のおやつを持っていた。

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