第17章 Autumn memory③
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その後も私は魔法にかかったまま、及川さんと楽しく過ごす事が出来た。
辺りは暗くなって、夜のパレードの後、
お城に綺麗な映像を映し出すプロジェクションマッピングのショーを見終わった私の隣で、案の定及川さんは号泣していた。
涙脆いもんね。私も綺麗な映像に鳥肌が立ったり、うるうるした場面もあったけど、及川さんの鼻を啜る音が聞こえるとちょっと笑えてきちゃった。
「及川さん、はい」
と、ティッシュを差し出すと豪快に鼻をかむ及川さん。わーお。
まだ濡れたまつ毛が綺麗だなぁ。
及川さんは一通り鼻をかんで落ち着いてから私を見た。
「綺麗だったね・・・」
「うん。最後のシーンとかもう俺涙止まんなかったよ」
・・・知ってます。
「ほんと、良かったなぁ野獣のやつ。いつまでも幸せになれよって感じ」
「ふふ、そうだね・・・」
大好きな所で、大好きな人と、大好きなキャラクターの服装で、沢山楽しい時間を過ごせた。
幸せな一日だったと感じた私は、自然とその言葉を口にした。
「・・・本当にありがとう、及川さん。すっごく、楽しかったよ」
一生の思い出になった。きっと暫くは余韻が消えないだろうな。
及川さんはどこか真剣に私の方を向いた。
「りお、本当に楽しかった?」
「うん・・・」
「本当の本当?」
「ふふ、ほんとのほんと。」
どこか探るように尋ねる及川さんがちょっと可愛くて、私は頷いた。
すると、及川さんはふにゃんと目尻を下げて・・・
「・・・良かった」
安心するようにそう呟いた。
沢山沢山、今回の旅行のことを考えて計画してくれたんだろうな。私が楽しんでくれるように・・・私のことをお母さんから聞いたり・・・そう考えるだけで、彼が愛しくなった。
もう一度彼にありがとうを告げて、今度は私から手を繋いだ。
触れ合った手の温もりを感じたくて、指を絡める。
及川さんは静かに・・・私の頭を撫でてくれた・・・ーーー