第17章 Autumn memory③
「え?俺と?」
きょとんと自分のことを指す及川さん。
「撮りたい撮りたい!」
「お兄さんイケメンだしー!」
「マジまんま王子!」
女の子はきゃっきゃと及川さんを囲む。
わかる・・・当たり前だよね。
本当、物語から飛び出して来た王子様みたいだから・・・
少し遠くでその様子を見ていると、及川さんからは意外な言葉が口から出た。
「ごめんねぇ、写真は撮れないや」
え・・・・・・
皆に優しい及川さんだから、絶対撮ってあげると思ったのに・・・
女の子はえ〜っとショックを隠せずに声を漏らす。
「あの子と来てるからね・・・」
そう言って、及川さんは私を見た。
わ、私!?
つられるように女の子たちが私のことを見る。
意外すぎる言葉に、私はおどおどと及川さんを見返す。
「そっか〜そうですよね!」
「残念、でも彼女さん一筋なんですね」
あ・・・
意外にも女の子たちはあっさりと引いて行く。
「お幸せに〜!!」
女の子たちは自由にそう言って去っていった。
「よ、良かったの・・・?」
おずおずと私は及川さんを見つめる。
及川さんは苦笑いを浮かべながら、私を見下ろした。
「俺があの子たちと撮ったら・・・、絶対嫌な思いするじゃん、お前」
「え・・・?」
私が嫉妬するって・・・思ってたの?
確かに、相手は年下の女の子だからそんなのしない、大丈夫って口では言えたかもしれないけど・・・
きっと心の中では何かもやもやしたものを感じたまま、この後過ごすことになってたかも、しれない・・・
それじゃ、私のこと思って・・・断ってくれたの?
「折角お前と来てんだから、嫌な思いさせたくないでしょ」
及川さんはばーか、と言いながら私の頬を摘んだ。
「ふっ、可愛くない顔」
そう言って笑う及川さんの背中にはお城。夕陽に照らされた顔は、綺麗で、まるで本当の王子様みたい。
意地悪、ナルシスト、我儘だったのに・・・
いつの間にこんなに優しくなったの・・・
そんな彼に私は魔法をかけられたように幸せだ。
幸せ、幸せな誕生日プレゼント。
私の胸元にも夕陽が伸びて、貰った薔薇のネックレスがきらりと輝いた・・・