第17章 Autumn memory③
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お化け屋敷が案外(本当は1ミリも)怖くなかったからか、及川さんは上機嫌でパークを歩いている。
「なんだよ全っ然、大したことないね!余裕だったし!」
余裕も何も、楽しむために作ってあるんだから・・・なんて口が裂けても言わなかった。
「あの骸骨のキャラクター可愛かったなぁ」
「うん!ハロウィンタウンの王様なんだよ」
「へぇ〜、お前本当に詳しいよね」
感心したように私を見下ろす及川さん。
うん、本当に好きなんだ。
ここで働くのが小さい頃の夢だったくらいだし。
「あ、ねぇ、及川さん。お城の前で写真撮りたいなぁ、いい?」
パークの中央にシンボルとして立っている大きなお城を指す。
「いいよ」
及川さんは了承してくれて、私たちは城へと近づいた。
「誰かに撮ってもらおうか」
「そうだね、じゃあ・・・」
と、辺りを見回す。すると女子高生の服装をした女の子の集団がいて、私は声をかけた。
「すみません、写真を取ってもらってもいいですか?」
「あ!いいですよ〜!縦にします?横にします?」
気さくな女の子は快諾してくれて、私はスマホを渡した。
ええっと・・・
「じゃあ、縦向きでお願いします」
私は足早に及川さんの隣に並んだ
「わ、すごーい!美女と野獣コーデだ!」
「可愛いー!」
カメラを渡した女の子以外の子達が口々に話す言葉が聞こえる。や、やっぱり照れくさいなぁ・・・
「お似合いですねー!」
お、お似合い!?そんな事ないって!
「何取り乱してんの。早くカメラ向いて」
及川さんが私の頭の上で言う。
私は必死に笑顔を作って、写真を撮ってもらった。
お似合い・・・その言葉が頭を支配して止まない。
固まってしまった私の脇を通って及川さんが女の子たちに近づく。
「ありがとね。良かったら、君らのことも撮るよ?」
撮ったら、撮ってあげる。影響スマイルな及川さんがそう言うと、女の子たちは顔を赤くして頷いた。
「お、お願いします!」
「はーい、じゃあそっち並んでー?行くよ〜」
及川さんに促されるまま、女の子たちはお城を背に可愛くピースサインをキメる。可愛いなぁ、私もあんな風に笑えたら良かったなぁ。
若い女の子たちのことを羨ましく思っていると・・・
「お兄さんと一緒にとりたいです!」
1人の女の子がそう言った。