第3章 spring memory③
新人研修でももの凄いスピードでレポートを終わらせてたし、私も置いていかれないようについていかなくちゃな・・・そう思っていると、国見くんはやれやれと言った顔をした。
「何で毎日練習で顔合わせしてる及川さんの所行かなきゃ行けないの」
「あ、そうだった。国見くん、チームの主務もやってるんだよね」
「そう。今度やる会社とチームの親睦会の事で挨拶に来たんだと思う。あの企画書の見直しもやんなきゃな」
無動作に髪の毛をかきあげて、国見くんは伸びをする。
凄い。今も私の教育係をしてくれて、人の倍以上働いてるのにまだチームの仕事があるんだ。見た目はやる気の無さそうな感じ(失礼)なのに、仕事はとってもできるエリート。
うぅーむ魅力的!及川さんよりもずっと魅力的!
「私・・・国見くんが楽になるように早く仕事覚えるね!」
「そう?なら有難いな。じゃ、その書類整理、三倍速で早く終わらせてね」
「う・・・っ、努力します・・・」
そして、再び書類整理に取り掛かろうとした。
「あ、そう言えば、覚えてる?今日うちの部署の新人歓迎会だよ」
「え!?新歓って今日だったの!?やだ、何も用意してないよ!」
驚きすぎて目を丸くする。
「用意って、何の・・・」
「え、出し物とか?新人が何か芸出しとかしなくちゃいけないんじゃないの!?」
頭の中の引き出しを開け漁って、過去にした芸出しの数々を思い出していると、意外にも目の前の国見くんがぷっと吹き出した。
「何それ、どこの体育会系女子の飲み会だよ」
「へ?やんなくてもいいの?」
きょとんと首を傾げる私に、肩を震わせて笑いをこらえる国見くん。あ、いいな、たまに見せる笑い顔。ポイント高い!
「うん・・・そう言うのはきっと山田さん辺りが得意だから振ればいいよ。北村さんの芸出し見てみたいけどね」
「や、やらなくていいなら越したことないよ・・・っ!」
そうしてちらりと上司の山田さん32歳、〇〇体育大学出身を見た。
ネタを振ればすぐに返して場を和ませてくれるうちの職場のムードメーカー・・・彼に振れば安定だな。
(けど・・・最近寝不足気味だし大丈夫かなぁ・・・お酒飲むと止まんなくなるんだよなぁ美味しくて・・・)
自分のコンディションが良いことを祈って、仕事終わりの飲み会に思いを馳せた・・・ーーー