第17章 Autumn memory③
ーーー・・・
カツン、カツンとヒールの音を響かせて及川さんに近づく。
振り向いた及川さんは、最初ほんの少しだけ目を見開いて、へぇ・・・といつもの笑みを浮かべて私を見た。
「いいじゃん、それ」
「・・・・・・っ・・・」
及川さんから渡されたのは黄色いワンピースだった。
少し深い黄色・・・黄土色に近いっていうんだろうか、そんなただの黄色じゃないそのワンピースに、可愛らしいヒールと、薄手の白いカーディガンも袋の中には入っていた。
それを着て及川さんの元へ行くと、彼が今日着ていた服に目が止まった。
及川さんはシンプルな青色のシャツをまくって、ネイビーのパンツに革靴、彼の容姿ならそのままパーティにでも行けそうなコーディネートだと思っていたけどその服装は・・・
その服装はまるで・・・とある物語に出てくるあの二人みたいで。
「これ・・・」
大好きな大好きな、美女と野獣・・・
真実の愛を見つけるあの物語の二人のような服装に私は顔が赤くなる。
テレビの特集で、ハロウィンの時期以外はコスプレはできない代わりに、お客さんは〇〇風な格好で訪れる人も少なくないって言ってた。まさか自分もそんな格好をするとは思わなくて・・・
「なーに照れてんの」
「や、だってこれ・・・」
私、大好きなヒロインになってる。照れないわけないよ・・・!
「俺が選んだんだから、自信もって歩いていいよ」
頭の上で、及川さんの甘い声が降ってくる。
「似合ってる・・・後は、やっぱコレだよね・・・」
不意に首元にひんやりと冷たい感触。及川さんが私の首筋に触れて、少しだけ肩が震えた。
「・・・じっとしてな」
近い近い近い!近すぎてどうにかなりそう!
ぎゅっと目をつぶった私に、及川さんの声がかかる。
「はい、これでカンペキだね」
満足そうに一歩離れる及川さん。
私は顔を上げて、首元に飾られた物に手で触れる。
「鏡で見てみな」
すぐ近くにあった鏡の柱に近づき、自分を映す。その中の自分の胸元には・・・ピンクゴールドの薔薇に、小さなルビーを飾ったネックレスが煌めいていた。
「俺からの誕生日プレゼント・・・勿論受け取ってくれるよね」