第17章 Autumn memory③
「だからそういう所が手癖悪いって言われるとこじゃん!」
「及川さんが余計なことばっかり言うからでしょっ」
睨み合う私たち。
「まぁまぁ。仲良しなのね。良かったわぁ」
お母さんはにこにこしながら私たちの様子を見ている。そんな和やかな雰囲気のお母さんを前に、私たちは言い合う気力を無くす。それから注文したパスタやピザが来て他愛ない話をしながら食事をしていく。
「そう言えばりお、向こうで恋人はできたの?」
「ぶっ!!」
あっぶないあぶない。危うくポタージュをこぼす所だった。
「はい?ぇ、はいっ??」
予想外な質問に完全にテンパる私。
「だってオーストラリアで働いてた時もそんな浮いた話聞かなかったし、あなたの恋愛話、お母さんなーんにもしらないんだもん。男の人は沢山いるだろうし、出会いもあるでしょ?そうだ、徹くんのいるバレーの実業団があるんだから、そこの選手の人なんてどうなの?ご飯行ったりとか、良い人いないの?」
お母さんこれ以上質問攻めしないで。
私の会社には勿論男性はいるし、出会いもあるし、及川さんの所属するバレーチームだってある。
だけど私の好きな人は及川さんのチームの誰かじゃなくて、今隣に座ってる及川さんその人で・・・
ご飯行ったり以上に色々と一緒に出歩いてるし、
東京まで二人できちゃってます、なんて言えない。
隣の及川さんを見ると、笑いを噛み殺して震えている。こら。
「んー、まぁ、何となく出会いはある、と、思う」
「んもう!そんな悠長なこと行ってると20代なんてあっという間に過ぎていくんだからね?これ付けて、もっと女磨きしなさい」
そう言ってお母さんは私にラッピングされた小さな袋をくれた。
「なに、これ?」
「誕生日プレゼントよ。当日には渡せないから、ちょっと早いけど・・・」
「わぁ・・・っ」
包みの中から出てきたのは、有名なデパートコスメの口紅だった。高いんだよね、これ。ケースにローマ字表記で私の名前が掘ってある!
色も赤すぎないピンク系の色で可愛い!
「少し早いけど、お誕生日おめでとう、りお」
今回の食事の目的はこれだったのかと、理解した。
「ありがとう、お母さんっ」