第17章 Autumn memory③
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新幹線は、滞りなく終点東京へ到着した。
お盆に一度帰ったっきりだから数ヶ月ぶりの東京。
相変わらずの人の多さ、忙しそうに行き交ってる。
その中で、私は見知った姿を見つけた。
「あ、いた!お母さん!」
私と同じような顔をして当たりをキョロキョロと見回してる人は、間違いなく私のお母さんだった。
「仕草もりおとそっくりじゃん」
「私あんなに変な動きしてる!?」
ぎょっとして及川さんを見ると、いつもみたいに笑ってる。
あ、またからかわれたな、これは・・・
「りお〜!おかえりっ」
お母さんが私たちの存在に気づいて歩み寄ってくる。そして私の腕にむぎゅっと抱きついた。
「お母さん!」
これはいつものお母さんのスキンシップだから全然気にならないけど、やっぱり数ヶ月ぶりに家族に会えると、嬉しい。
「叔母さんこんにちは、お久しぶりです」
「徹くん!今日はありがとうね!写真では見たけどこんなに大きくなっちゃったのね〜!いい男だわっ」
私より身長の低いお母さんが及川さんを見上げると首が痛そうだ。一般男性よりも大きいもんね、及川さんって。
「ここで立ち話も何だし、早速ランチに行きましょっ」
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私たち3人はお洒落なイタリアンのお店に入った。スモークサーモンを食べながら、お昼から少しお酒を飲む、はぁ〜贅沢!
「今日のこと、ずっと楽しみにしてたの!無事に来られて良かったわ」
向かいに座るお母さんも赤ワインの入ったグラスを持ちながら上機嫌で話をしている。
「そんなに前から決めてたの?」
「いや、2週間くらい前ですよね?そんなに前ってわけでもないよ」
なるほど・・・。どうして内緒にしてたのかはわかんないけど、こうして私たち親子と及川さんが同じテーブルでご飯食べるのって何だか不思議・・・。
「徹くんいつもありがとうね、りおのこと面倒みてくれて」
「とんでもないです。いつも家事とか手伝ってくれて、助かってます」
及川さんはにこやかに答えた。
そんな風に思ってくれてるんだ・・・
「まぁ、ちょっと足癖と手癖が悪いんで歳の近い妹みたいに・・・いてててっ」
及川さんの脇腹を抓ってその先を言わせないようにする。
全く・・・喜んだ私が馬鹿だった。