第16章 Autumn memory②
《Autumn memory②》
りおside
みかん狩りでまさかの捻挫をしてから一週間、足首の腫れは順調に引いてきてギブスも外れ、松葉杖もつかなくて良くなった。
先週は3日間お休みを貰って療養させてもらったから、今週から仕事は五連勤だ。頑張らないとな。って思うんだけど・・・
この一週間、体は全然しんどくないのに、
何か色々とどっと疲れた・・・
「で?何がどっと疲れたの?」
こういう時は、私の個人相談所と化している国見英くんのお昼休憩を独占している。
今日の相談料は、最近寒くなってきたのでホットココア。
それを両手で包みながら国見くんは尋ねてきてくれた。
「あのね・・・なんかね・・・うーん・・・」
「・・・昼休みあと10分で終わるけど?」
「あーはい!言います!はい!及川さんの事です!」
歯切れ悪く言うのを渋っていると、国見くんが催促してきたので挙手して口を開いた。
「うん、それは、わかってる」
「う、ですよね・・・」
「で?今度は、どうしたの?意地悪な及川さんは、北村さんが怪我して・・・ちょっとは優しくなったりした?」
「・・・・・・です」
「ん?」
「そうですっ」
国見くんはへぇー、と自身の手の乾燥を気にしたのか掌を見だした。
「良かったじゃん、一歩、前進した感じで」
「でも、何かね違うの、国見くん!」
私は、ちゃんと聞いてもらいたくて、国見くんの手を取った。それくらい、私は悩んでいたから!
「っ・・・わかったから、ちゃんと聞くよ」
国見くんは僅かに目を見開いた。ぱっと私の手から手を引っ込めると、国見くんは私の方を見てくれた。
「・・・・・・優し過ぎるの」
「え、及川さんが・・・?」
こくん、と頷く。
「叔母さんが家にいない時のご飯作るのは勿論だったんだけど・・・お風呂洗いも、食器洗いも洗濯も・・・私がやってた事ぜーんぶ及川さんが代わりにやってくれて、足のこと気遣ってくれて毎日湿布貼ってくれたり、朝、会社まで車で送ってくれたりして・・・」
この一週間、及川さんの行動は今までの彼と一変して、
私を気遣ってくれて・・・
「いつもの及川さんじゃなさ過ぎて、困って、ます・・・」