第15章 Autumn memory①
そう言うと、流石にりおは、何も言わなかった。
顔を赤くして、目線をそらした。
「ごめんね」
「ごめん、じゃないでしょ?」
「・・・・・・?」
「・・・あり?」
「あり、がとう・・・?」
探るように視線を俺に向けた。そして言ったその言葉に、俺は微笑んだ。すると、りおも照れたように微笑んだ。
「ありがとう、及川さん」
・・・・・・・・・
その時、俺は岩ちゃんに言われた言葉を思い出した・・・
"モヤッとするくらい、りおの事を知りたいって思うくらい・・・今のあいつのこと、どう思ってんのか、って事だ"
・・・分かってんだよね。
今のあいつに対する気持ちが、以前とは変わってきてるって・・・
でも俺は、その気持ちに、名前をつけることは、まだ、したくない。
りおに半端な気持ちで、伝えたくないから、ね・・・。
「ふっ・・・ばーか。さっさとその味噌汁の味付け、俺に任せなよ」
まだ、もう少しだけ・・・
時間がほしい。