第15章 Autumn memory①
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「岩えもーん!!」
りおを連れて帰り、家で休むよう伝えてから母さんに頼まれていた買い出しをしに家を出た。俺はスーパーへは向かわずに岩ちゃんの家へ飛び込んだ。
「おい、その呼び方やめろ。ネコ型ロボットが頭過ぎる」
「そんなことよりさ、聞いてよ岩ちゃん!俺のこのモヤモヤを取り除いて欲しいの!」
「・・・・・・モヤモヤ?」
岩ちゃんは診察する先生みたいに、俺の症状(今日あった出来事を)を聞いてくれた。そしてその病名は・・・
「アホ川だな、やっぱり」
病名、アホ川、らしい。
「アホ川でもなんでもいいから、この胸の真ん中にある変な腫瘍をとってください。あ、いや、殴るとか物理的なもんじゃないよ?」
座っていたソファーから立ち上がって俺に近づこうとした岩ちゃんが、何をするのか本能で察したから、制した。
あーあ、岩ちゃんの事ならこんなにすぐに分かるのに・・・
俺はあいつの事を全っ然知らないや。
「本当、バレーの時はクソくらい頭切れんのに、女が絡むと本当へたれ込むよなお前って」
うん、分かってる。その度に岩ちゃんに助けて貰ってたからね。
「昔のりおの事を知らねぇなんて当たり前だろ。住む場所も、生活も全然違ってたんだから。・・・元カレがどうであったにせよ、昔のりおが誰を好きだったにせよ、んなもん、しょうがねぇだろ」
正論。そうそれ、そうなんだよ。
わかってんのに、頭でどうも踏ん切り付けらんなくて・・・
因みに主将君は元カレじゃないよ。
岩ちゃんは俺の胸元に指差して言った。
「大事なのは、お前が全く知らないあいつの事を、知りたいって思う気持ちだろ。」
りおのことを・・・知りたいって気持ち・・・。
「烏野の主将でも知らない、今のあいつの事をお前が分かってやればいいんじゃねぇの」
確かにそうかも。
過去に戻ってりおのことを知ることはできないなんてわかってる。それ以上に俺がどれだけあいつを知りたいか、知ろうとするかで、この気持ちって埋まっていくのかな。
「主将君が知らないりおのこと、俺は知れるんだもんね」
一緒に住んでるし、きっと誰よりもりおに近い位置に俺はいるから・・・
後は俺がどれだけ、りおのことを知りたいか・・・か。