第15章 Autumn memory①
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「あ〜あ、やっぱりギブスで固定されたねぇ。結構腫れてきてたし、仕方ないね」
診察室の前で待ってくれていた及川さんは私のギブスの足をまじまじと見た。
「全治2週間。ギブスは大体三日くらいはつけた方が良くて、後は腫れ具合見て調節しなさいって。杖はレンタルだから、お兄さん?及川さんのチームのトレーナーさんに返してって言われた」
「OK、ラッキー、それはわざわざこっちに返しに来なくて良いし良かったね」
「うん。色々迷惑かけてごめんね」
家でも松葉杖をつくことになるし、及川さんにも、叔母さんにも気を遣わせてしまうよね。そう思うと、しゅんと肩身が狭くなる。
「なーに、柄にもなく落ち込んでんの?・・・雨上がったばっかだったし、滑ったのはしゃあないんじゃん?みかん、美味かったんでしょ?」
その言葉にこくんと頷く。
「ならいいじゃん。はい、オワリ。次謝ったらまたお姫様抱っこでここから連れ出すから」
「そ、それなら死んでも謝んないっ」
嫌じゃ・・・ないんだけど、あんなに至近距離で及川さんを見るのは刺激が強すぎる。
及川さんは、この話は終わり、とばかりに椅子から立ち上がった。
「じゃ、会計寄って帰んべ」
及川さん、何だか最近優しいな・・・
よく荷物とかも持ってくれるし、機嫌がいいのかな・・・。
「ほら早く。普段の拙い足取りがもっと拙いよ?」
まっ、普段の意地悪は相変わらずだけどね!
私は慣れない松葉杖を着きながら歩き出した・・・
と、
「りお・・・?」
「・・・え?」
どこか懐かしい聞き覚えのある声、
間違いなく私を知っている呼び方・・・
私が振り向いた先にいたのは・・・・・・
「・・・大地、さん・・・・・・?」
大学時代、私の好きだった人・・・
澤村大地さんだった・・・