第15章 Autumn memory①
ーーー・・・
それから及川さんに車に乗せてもらったけど、なるべく足を心臓から低い位置に置かないようにしなって意向で後部座席に足を伸ばした状態で座らせてもらった。
そして車が発車してものの10数分、とあるクリニックへと着いた。
「ほら、着いたよ」
「・・・・・・・・・」
「わかったよ、おんぶでしょ?はいはい」
及川さんはため息を着いて、私の前に背を向けてしゃがみ込んだ。
(広い背中・・・)
トレーニングで鍛え抜かれた逞しい体が、私服を着ていてもわかる。あ、短い毛のうなじが凄く綺麗だ。背中だけでも魅了されそう。
「ったく・・・お姫様抱っこで受付の前に差し出して欲しいの?」
及川さんの背中に見惚れていると、及川さんが不機嫌な表情を浮かべて首だけをこちらを向けた。
「い、いえ!はい、乗ります乗ります!お邪魔します!」
私はもぞもぞと動き出し、そっと及川さんの背中に乗った。
お姫様抱っこよりは目立たないけど、これはこれで私が及川さんに抱きついているみたいで恥ずかしいな・・・でも、
ふんわりと香る、及川さんの香水の匂い。
洋服はふんわりしていて、体温をほんのりと感じて心地いい。
安心する・・・なんて、世の女の子を押しのけて悪いことしてる気がする・・・
ーーー・・・
「レントゲンも特に問題はありません。全治2週間の捻挫ですねー」
で、す、よ、ねー。予想通りの診断だった。
先生は気さくでにこやかで、いい人そうで良かったけど私の捻挫までの経緯を聞くとちょっと笑ってた。
大の大人が遊んでて捻挫するんだもんなぁ、恥ずかしい・・・
「床に足つけるのが痛いと思うので、取り外し可能なギブスをつけて、その間は安静にしましょう。三日ほどですねー」
・・・ということは明日から三日間は仕事も休まなくちゃな・・・
トホホ。国見くんを含め、職場の人に申し訳ない。
「はい・・・」
「痛み止めと湿布薬つけて、腫れが引くのを待ちましょう。お大事に」
私の気分とは正反対に、先生はにこやかだった。
それから助手の人が私の足に合わせたギブスを作ってくれて、松葉杖も高さを調節してレンタルしてくれた・・・