第15章 Autumn memory①
「そんじゃ早速行くよ」
「ま、待って!」
そう言ってまた私を抱えようとした及川さんの胸板に手を当てて制した。
及川さんは首を傾げている。
「みかんまだ食べたりてな〜いなんて言ったらデコピンだかんね?」
「・・・そんな食い意地張ってないし」
「で?一体何?」
ずいっとさっきよりも近くなる及川さんの顔が、直視できない。
「お、お姫様抱っこは恥ずかしいから、普通におんぶして・・・ください」
目線を合わさずに小さく告げた。すると、及川さんは一瞬固まって、そしてべーっと舌を出した。
「やーだね!捻挫したりおが悪いんだから、聞く義理はないね!」
そうしてまた私の体は宙に浮いた。
「きゃあ!!もう、本当意地悪!性悪男〜!!」
及川さんに攫われるように抱っこしてもらいながら、私は周囲の視線を独り占めする形になってしまったーーー・・・