第15章 Autumn memory①
トサッと優しく私をベンチに下ろしてくれた及川さん。
私の足をベンチの上に乗せて、私は長座するような格好になった。
「足、見せて」
「うん・・・」
及川さんは私のスニーカーに手をつけた。
(あ、土が・・・)
私のスニーカーには、ぬかるんだ土がついているのに、及川さんは気にもとめずに靴紐を解いて底の部分を持った。
「・・・痛む?」
私の足元に屈んだ及川さんが上目遣いで見上げて尋ねてくる。
こんな時にまでドキドキと胸が痛い。
「う、ううん、平気・・・」
私が首を振ると、ゆっくりと靴を脱がせてくれた。
そしてそのまま、靴下も脱がされる。
きゃ〜・・・
色々、昨日手入れして本当に良かったと思った瞬間だった。
男の人に素足まじまじと見られるなんて、そうそうないよ・・・
「あーあ。腫れてきてんね」
及川さんは言った。
「調子乗って子供みたいなことすっから」
「うっ・・・ごもっともです」
ふざけ過ぎました。その天罰がコレなのかなぁ。
しょぼん、と肩を落とす私に、及川さんが立ち上がってぽんっと頭に手を置いた。
「ほーんと、及川さんに世話焼いてもらうとか、激レアだかんね?」
「え?」
きょとんとしている私の頭に未だ手を乗せたまま、及川さんはスマホを取り出した。そして誰かに電話をかけている。
「はぁい、もっしもーし、及川ですけど、今さ、出先で捻挫してる連れがいるんだけど・・・って違う違う俺じゃないって。・・・うん、そんで、今、〇〇市にいんだけど、先生の二店舗目の整骨院が近いと思うんだよね。そこ、今日開いてる?開いてんなら、このまま直接そこ向かおうと思うんだけど・・・・・・・・・お、ラッキー♪じゃあ今からそこ寄るよ、ありがとね〜」
と、手短に電話は終わった。スマホをスボンのポケットに入れると、及川さんはさてと、と呟いた。
「今から診てもらうよ」
「え、誰に?」
「うちのチームの専属のトレーナー、整形クリニックやってて、それの二店舗目がこの近くにあんだよ。そこは、主にトレーナーの弟がやってるらしくて、腕はいいから変には扱われないと思うんだよね。だから、そこで診てもらう」
なるほど・・・
流石及川さん、頭の回転が早い・・・
私なんてまださっきの特技披露したことが今更になって恥ずかしくなってきたって思ってた所なのに・・・