第15章 Autumn memory①
グキっ。
「あ。」
・・・・・・・・・思考が停止した。
みかんは無事に口の中に入った。だけど足元をそっと見下ろす。
・・・右足首に感じる、珍しい、鈍い痛み。
右足を地面につけ続けられなくて、ペタンとその場に腰を浮かした状態で後ろに手をつく。お尻を湿った地面に着くのは嫌だ。
「あー・・・」
「りお、どうしたの」
及川さんが駆け寄ってくる。
「あの・・・ちょっと足首を捻ったみたい・・・」
転びはしなかったけど、確かに思い切り足を捻った。
その証拠に足首は熱くて痛みが増してきた。すると・・・
「俺の首に手、回して」
及川さんは私の隣にしゃがみ込んだ。
「え・・・?」
「早く」
「う、うん・・・?」
私は言われた通り、及川さんの首に右手を回した・・・その時、
左の脇と膝裏に腕を回されて、ぐんっと引き寄せられたかと思うと、私の体は宙に浮いた。
「ひゃっ!!」
及川さんが・・・私の体を横抱きした・・・と言うより・・・
えええぇぇえ!?え、なに、この状態!?
私、及川さんにお姫様抱っこされてる!?
私の脳内は一気にパニック状態になった。
「あ!あ!あの!」
「ちょ、暴れないでよ、ベンチまで運ぶだけから」
「あ、歩ける!歩けますから!」
じたばたと手と左足を動かす。
とにかく降ろして!
このままだと、全国の及川さんファンに狙われる!!
「地面に足すら着けれないのに、どうやって歩くの」
僅か10数センチの距離に彼の端正な顔があって、頬の上気するのを抑えられない。
「・・・落とされたくなかったらじっとしてなよ」
「は、い・・・・・・」
何をしても降ろしてくれる雰囲気はなくて、私は大人しく及川さんに運ばれることになった。私を抱き上げたままでもスタスタと近くのベンチまで歩いていく及川さん。
赤くなった顔を少しでも隠せるように、私は俯いたままいた。
他の人が見ているかもしれないと思うと、顔を上げられない。
こんな・・・こんなことあっていいのかな、及川さんの顔、近すぎるよ・・・
布越しにじんわりと伝わって来る及川さんの体温。
ひゃあ〜、もう、両手で口元押さえるしかできないよ・・・