第14章 summer memory⑨
A、及川さんほんと有り得ない!もう帰る!
B、及川さんの顔なんて見たくない!もうトイレに引きこもる!
C、及川さんなんて知らない!他の人と回る!
どの予想も、俺は大体嫌われてんのね。自分でもわかるわ、あんな態度見せちゃったら。
AやBみたいな子供っぽいことはりおはしないかな・・・
Cなら・・・どうしよう、他の男と回るとか考えてたら・・・!
(それはダメでしょ!今日のあいつは!)
絶対その後、襲われっから!
俺は立ち上がってりおを探しに辺りを歩き出した。
兎に角、トイレは出てる以上、他を探さないと。
・・・ったく、携帯出ないとか・・・相当怒ってるじゃん。
まぁ、確かに・・・
今回は100%俺が悪いよね。ほんと、馬鹿だと思う。
すれ違う浴衣の女の子、一人一人を見る。似たような色の浴衣を着てる子は多いけど、りおじゃない。
俺好みのマシュマロボディの浴衣の女の子もいるけど、今は全然、気にならない・・・
どんなに綺麗な子がいても、どんなに色気のある子がいても・・・
俺が探してるのは、あいつなんだ・・・
ーーー・・・
(くそ・・・っ、全然見つかんない)
随分探したけれど、りおの姿は見つからない。携帯も出ないし・・・
途中、迷子放送が流れたけど、もういっそりおの事も放送使って探してやろうかって思ったくらい。
随分歩き回って、足が疲れた。膝に手を置いて休憩していると、また嫌ぁなことを考えちゃうね・・・
(このまま・・・俺の前からいなくなんのかな・・・)
俺の、嫁みたいに・・・
あっさりと俺を捨てて・・・
彼女とりおを比べたくはないけれど・・・
俺の中で、りおの存在は、
出会った頃からどんどんと大きくなっていったから・・・
その分、失った時のことを想像すると、ゾッとした。
"及川さんっ"
その笑顔が目の前からなくなる・・・
俺を置いて・・・
そんな思い・・・もう二度と、したくなかった・・・
(大切に・・・なってたんだ・・・こんなに・・・)
こんなに胸が締め付けられるくらいにまで・・・
俺はりおのことをそんな風に思ってたんだって、
今更、気づいた・・・
途端にそれがもう、見れなくなるかもって思うと、
怖くなった・・・・・・