第14章 summer memory⑨
《及川side》
ーーー・・・
あーあ、やっちゃった・・・
男として最低なことを俺、
今日どんだけやりまくってんだろ。
りおの浴衣姿、似合いすぎて照れてカタコトでしか話せなくなるし、目も合わせらんない。
折角綺麗にしてきてくれたのに、似合ってるの一言も口から出てこなくて、思ってもないこと言っちゃうし。
赤くなってんのバレてんのに、変な意地張っちゃったし、
国見ちゃんが意外にりおに好意的なのにちょっと嫉妬して、りおに言いがかりみたいなこと言って、怒らせたし・・・
何やってんだよ俺、ほんとダサい。
「はぁ・・・」
今日何十回目かも分からないため息を零しながら、俺はトイレ近くの休憩所で座っていた。
俺の前を、浴衣姿の女の子達が何十人も通っていくけど・・・不思議と目を奪われない。
それは、あいつが今日、
あんな姿でいるからだろうな・・・
元々、目はパッチリしてるし顔も小さい。
普段のビジネスメイクも激うすだからあんま目立ってないかも知れないけど、あいつの素材の良さは結構前から知ってた。
だから、いざあんなにバッチリとキメてくると本当にもう頭が真っ白になった。・・・イチコロってやつ?
なのにそんな風になっちゃった事が信じられなくて、ついついいつもと同じ余裕な及川さんを演じたくて・・・空ぶった結果りおを怒らせてしまった。
はぁ〜もう、俺、ほんと馬鹿。
紳士の欠けらも無い。
今までこんなこと、嫁の前だってしたこと無かったのに・・・
あいつの前だと、俺はかっこつけらんない・・・
何でなんだろう、これ・・・。
(ていうか、もう20分くらい立つけど・・・そんなにトイレ混んでんの?長くない?)
色々とデリケートなこともあるからそんなに気にしてなかったけど、あまりにも遅い。ちらりとトイレの方を覗くと、あれ?
誰も並んでなくね?出てくる人も、全然違う浴衣の女の子だ。
不審に思って俺はりおの携帯に電話をかけた。
TRRRRR・・・TRRRRR・・・
ダメだ出ない。え・・・?りお、どこいったの?
そこで俺の脳内には、色んなマイナスなことが浮かんだ。