第14章 summer memory⑨
「じゃあ、俺から及川さんに連絡入れといてあげるよ」
「え?いいの?」
「とりあえず早く合流できた方がいいんじゃない?」
その通りだと思う!トイレはここから少し距離があるし・・・先に合流した方がいいかも!
「そうだねっ、お願いします!」
国見くんのお言葉に甘えよう。
早速素早く自分のスマホを取り出して及川さんにメッセージを送ってくれた。
暫くして国見くんは、何故かじいっと私を見つめた。
「・・・・・・?どうしたの?」
すると国見くんは若干、本当に僅かに口端を釣り上げて笑った。
「いや?世話の焼ける人だなって思って・・・」
「へ?私?ごめんねっ」
「いや・・・北村さんの事じゃなくてさ・・・」
・・・?誰のこと言ってるのかな・・・
これ以上聞いても、きっと国見くんは答えてくれなさそうだから、変に言及しないでおいた。
「そう言えば、帰らなかったんだね!何か忘れ物?」
「いや、中学高校のバレーの同級生から連絡が来て、久しぶりに祭り行きたいって言い出したから、今、俺もそいつ待ち」
「へー!そうなんだ!じゃあ私たち、二人とも待ちぼうけ組だね!」
「俺はそうだけど、北村さんはちょっと違う気がする・・・」
「そ、そうかな・・・」
そうだよね、この件に関しては私が携帯を置いてきちゃったから悪いよね。及川さんと合流したら、ちゃんと謝ろう。
「そ、その同級生って、及川さんにとっても後輩ってことだよね?」
国見くんが及川さんの中高の後輩であるように、その人もそうなのかな?
「うん、そう。・・・北村さんの口からは、やっぱり及川さんの名前が出ること多いね」
国見くんは手に持っていた水の入ったペットボトルを一口飲んだ。
「そ、そうかな・・・そうかも。・・・ご、ごめんね、何かいつも相談乗ってもらってるし」
確かに・・・国見くんの前で彼の名前を出すことが多いかも。私の気持ちを知っているからって言うのもあるけど・・・流石に耳にタコだよね。
「いや?俺は別に構わないけど・・・ただ・・・」
もう一口、水を含んでから私を見つめる目は、どこかいつもと違う気がした・・・
「いつでも北村さんに想ってもらえてる及川さんが、羨ましい・・・」
「・・・え・・・?」