第14章 summer memory⑨
「国見くん・・・?」
さっき、さよならした筈の国見くんだった。
国見くんは猫背だけど高身長だから、こんな人混みの中でも目立つなぁ。国見くんは私を見下ろして首を傾げた。
「あれ?及川さんは・・・?」
当然の質問だ。さっきまで一緒にいた筈の人の姿が見当たらないからね。
「それが・・・」
ドンッ
「きゃっ」
「危ない」
またしても、後から人にぶつかられて今度は転びそうになった。それを、国見くんの逞しい腕が腰に回され支えられる・・・。
「おっと・・・」
「あ、ありがとう、国見くん・・・」
国見くんの手は、布越しにもわかるくらいひんやりとしてる。
「ここ、人が多いから少し端にいこ」
「そう、だね・・・」
そう言って私の体制を元に戻してくれると、前を歩いて私に道を作ってくれる。時折チラチラと私の方を見て、ちゃんとついて来れてるか気にしてくれる。優しいな、国見くんって・・・
「で?さっきの質問に戻るけど、及川さんは?」
「あ、うん・・・それが・・・国見くんとさよならしたあと、ちょっと喧嘩しちゃって・・・トイレ行って気持ち切り替えようとしたら男の子が迷子でその子のお母さん待ってたら及川さん放ったらかしになっちゃってて・・・でも、携帯をトイレに置き忘れちゃったみたいで・・・」
「相変わらず面白いくらいの分かりづらい説明だね。つまり、お互いどこにいるのかわかってない状態なんだね」
「うっ、そ、そうです・・・」
簡潔にまとめられてぐうの音も出ない。
喧嘩した原因の中に、国見くんの要素があるなんて絶対言えないな。そもそも悪くないんだけど・・・