第14章 summer memory⑨
ーーー・・・
「トオル!!」
「ママ!?ママーっ!!」
本部でトオルくんの名前と、服装を説明した迷子放送を流してもらい、暫くの間トオルと遊んでいると(遊ばれてた?)、トオルのお母さんらしい浴衣を着た女の人が現れた。そしてトオルくんを見るなりこちらへ歩み寄ってきて、トオルくんも破顔させてその人に抱きついた。
「もうっ、あそこで待っててって言ったのに、どこいっちゃったのかと思ったわよ〜」
ひしっと抱き合って、トオルくんのお母さんはトオルくんの頭を撫でた。
「ママぁ〜あいたかったよ〜ぉ!」
再び泣きじゃくるトオルくん。そんな彼をよしよしとあやすお母さんをみると、何だかほっこりとした。無事にママに会えてよかったね、トオルくん。さっきまで随分私に懐いてくれていたから、何だか離れると少し寂しい。
「お嬢さんがずっと一緒にいてくれたの?」
お母さんが立ち上がって私に頭を下げてきた。
「うちの子が、ご迷惑おかけしてすみませんでした」
「いえ、迷惑だなんて!兎に角、お母さんと会えて良かったです。・・・ね?トオルくん?」
早速お母さんの手をしっかりと握ったトオルくんに向かって言葉をかける。
「うん!りお、遊んでくれてありがとう!」
「こら!トオル、お姉さん、でしょ?!ごめんなさいねぇ、馴れ馴れしくて」
そう言ってお母さんがペコペコと頭を下げるものだから、私の腰も低くなる。
「本当、お手数おかけしてすみませんでした。お嬢さん、ご親切にどうもありがとうございました」
「ほんと、大したことしてませんから、気にしないでくださいっ。これから花火も上がるんでしたよね?それまでにちゃんと会えて、良かったです」
そう言ってにっこりと微笑む。
あ・・・私も、花火が上がる頃には、及川さんと合流出来るかな・・・
ちらりと時計を見ると、花火まであと20分・・・
何だかんだ、結構ここに滞在してたから、流石にそろそろ行かないとまずい、よね・・・
名残惜しいけどトオルくんとは、これでバイバイだ・・・
「それじゃあ、トオルくん、もうママとはぐれないようにね?また、遊ぼうね」
「うん!りお、ほんとに、ありがとう!」
私たちはお互い満面の笑みでさよならを交わし、
私はもう1人の"徹くん"と会うために、まずはトイレの携帯を取りに行ったーーー・・・