第14章 summer memory⑨
「ね・・・?僕、まずは膝の傷を手当しに行こっか。その後、お姉ちゃんがお母さんのこと、探してあげるから」
できるだけ安心させるように背中をさすって話す。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を、持っていたハンカチで拭いてあげる。
「ね?ばい菌入ると大変だから、早く消毒した方がいいよ」
「おねぇちゃん・・・っ、なまえなんていうの?」
「私?りおだよ」
「りお〜!おひざいたいよぉ!」
呼び捨てなんだ(笑)
全然、可愛いからいいんだけどね。
「僕のお名前は?」
「トオル!」
・・・トオルくん、なんだ・・・。
何かドキッとしちゃうね。
「トオルくん、歩ける?」
「うん・・・っ」
泣きじゃくるトオルくんの手を繋いで、私は救護所を探して歩き始めた。
トオルくんはお母さんとはぐれちゃったのがすこぶるショックなようで、私と手を繋いでいてもずっと泣き続けていた。膝の怪我も痛そうだし・・・
うーん、何か気が紛れるものないかな。
このままじゃ、可哀想・・・。
あっ!
「トオルくん、わたあめ食べる?」
ここには子供が大好きな(私も大好きだけど)食べ物が沢山ある。偶然前方に見えた綿菓子を売っている出店を指して、手を繋いでいるトオルくんを、覗き込んだ。
「わたあめ?食べる!」
その瞬間、パッと花が咲いたみたいに笑顔になってくれたトオルくん。
「うん、じゃあ行こっか!」
「うんっ!」
私たちは綿菓子屋さんで少し並んで、ふわふわしたわたあめを買った。それをトオルくんに上げると、それはそれはあどけない笑顔を見せてくれた。
ぱくりとそれを食べると、大きな声で、
「うわぁおいしい!」
そう言って飛び跳ねた。ふふ、膝の痛みなんて忘れてるみたい。
「そう?良かった!」
私まで嬉しくなっちゃうよ。
「りおも食べる!?」
ずいっとわたあめを差し出してくれたトオルくん。
「え、いいの?」
「うん!一緒に食べよっ」
優しいなぁ。トオルくんの言葉に甘えて、私もわたあめをぱくりと食べてみた。う〜ん!あんまいっ
「おいしい?りお」
「うん、美味しいよ!トオルくんありがとう!」
しゃがんで目線を合わせると、くりくりとした瞳が私を映す。
うん、もう泣いてないみたい、良かったぁ!