第14章 summer memory⑨
「いえ?特には・・・率直な感想を言っただけですけど」
当の国見くんはどうして私と及川さんが驚いているのか、分かっていないようだ。意外と天然なのかな・・・?
「あ、ありがとう・・・」
兎に角、褒めてくれたんだしお礼言わなくちゃねっ。
国見くんに褒められるなんて滅多にない事だし、嬉しいなぁ。
「国見くんも、その紺色の浴衣、似合ってるね!」
「ありがとう。これから二人で回るの?」
うっ・・・褒めても動じない国見くん、流石です。
「うん!国見くんはもう帰るの?」
「うん。八時から花火も上がる予定だからそれも楽しんでいったら?」
「え、花火があるの!?うん、そうするね!ありがとう!」
お祭りだけじゃなくて、花火も見れるんだ!ダブルで得した気分!
「うん。それじゃあ、また会社で。・・・及川さん、お先失礼します」
軽く会釈をして国見くんは颯爽とその場を去っていった。
まさか、国見くんがあんな事言うなんて思わなかったな・・・
でも、国見くんも男の人なんだし・・・そういう視線で人を見ることってあるんだなって感じた・・・
すると、じぃっとした視線を感じる。
「へ?」
その視線は隣にいた及川さんからで、僅かに眉間にシワを寄せていて少し怒っているようだった。
「及川・・・さん?」
「国見ちゃんに褒められて、なーに舞い上がっちゃってんの」
「ええ!?」
唇を尖らせて少し顎が上がってる。もしかして、さっき国見くんに言われた言葉を私が真に受けてると思ってるの?
まぁ確かに褒められて嬉しくないわけじゃなかったけど・・・
「別にそんな・・・ただ、国見くんがあぁいう事言うの、珍しいなって思っただけ」
「まぁ確かに国見ちゃんがあんな事言うのは珍しいよ。でもさ、それに一々反応しても、国見ちゃんがりおに好意があるとかそういうんじゃないと思うけどね!」
ムカ・・・。なに、その言い方。
「別にそんなこと分かってるわよ。でも私だって女なんだし、どっかの誰かさんに馬子にも衣装って言われるより、可愛いとか綺麗って言われる方がうんと嬉しいわよ」