第14章 summer memory⑨
え・・・あれって、ほんとにりお?
下を向いている顔は、確かにりおで、
あの柄の浴衣を着ているのは、確かにりおな筈なのに・・・
いつもと違う。
彼女が顔を上げて俺を見つける。
あっという顔をして、それから微笑みながら、ヒラヒラと手を振る。
「お疲れ様!夕方からやってたし暑かったでしょ」
「あ、うん・・・」
「私もっと遅くなると思って、待ち合わせ時間丁度に来たけど、こんなに早く終わると思わなかった!」
「うん・・・」
「・・・・・・及川さん?」
紺色にピンク色や薄紫の紫陽花の花が散りばめまれた浴衣は昨日も見てたけど、人が着るとまた全然雰囲気が違う。
髪も横で結ってもらって、ピンク色の花飾りを付けている。普段、出かける時にも滅多にしない化粧もしていているから・・・
(俺・・・確実にドキッとしてんだけど・・・!)
こんな・・・女の子らしいりお見たことないから!
「あ、いや・・・なんかさ」
どこ見ればいいかわかんないよ!だっさ俺!
「なんかさ・・・?あ、これ、昨日の。叔母さんに着せてもらったんだけど、どうかな?」
浴衣の裾を手で持って全体の柄を見せてくれる。
少しはにかんだ笑顔を見せる。ピンク色の口紅をさした唇を綺麗に弧を描きながら・・・
だからさぁ、似合いすぎてて言葉が出ないんだってば!
なんて、
「あー・・・馬子にも衣装ってこの事かーって思ってさ」
素直に言える訳無いじゃん・・・
・・・可愛いかよ、もう。