第14章 summer memory⑨
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日曜日、夏祭り当日、
田舎だけど、この日だけは町は賑わいを見せる。それもそのはず、この祭りは宮城でも結構大きな祭りで、他の町から来る人も多い。
うちのチームを知ってる人たちは、メンバーと一緒に神輿担いで練り歩きとかもできるし、その後の浴衣着たメンバーのサイン会もあって、ファン交流会みたいなものだから、この日は結構忙しい。
ねじり鉢巻に、"祭"って後ろにドンッと書かれた羽織を羽織って例年通りファンの人達と一緒に神輿を担いで練り歩いた。それから、一度浴衣に着替えてサイン会と握手会を終えた頃には結構体は疲れていた。
簡単なミーティングを済ませたあと、解散し、選手はみんな、それぞれ帰路につく人もいれば、彼女や友達と合流して祭りに行く人もいる。
「及川ー、このあとどうすんのー?俺ら適当に店入って呑むけど、来る?」
「あーごっめーん、先客いてさ、今日はやめとくね〜」
チームメイトの清水くんに手を合わせて言い、財布とスマホを片手に持つ。
「お、そっか!じゃあまた明日だな!」
THE真面目な清水くんは、爽やかな(ま、俺のが数百倍爽やかだけど?)笑顔で手を振ってくれた。
そんな清水くんにヒラヒラと手を振り返して、俺はサイン会会場を後にした。
カランカランと下駄の音があちこちで鳴る。すれ違う人の殆どが浴衣で、その色も、白、黄色、青色、ピンク色、様々だ。うん、いいね、浴衣女子最高!
赤提灯が道を照らし、笛の音が聞こえる。俺はスマホでりおの番号を呼び出した。
「もしもし?今終わったけど、どこら辺にいる?」
《お疲れ様、時間通り終わったんだね!今?待ち合わせしてた鳥居の所に着いたよ》
「OK、じゃあそのままそこいて。俺ももうすぐ着くから」
そう言って電話を切る。
りお、あの浴衣着てくんだよね。めちゃくちゃ受け取るの渋ってたけど、今日はちゃんと母さんに着させて貰えたのかな?結構いい柄だったよね、あれ。
昨日母さんから貰った浴衣を着たりおを想像しながら、待ち合わせ場所へ向かう。
ま、日本人なんだし、誰だって浴衣は似合うよね。俺とかこの黒のやつとか抜群に似合ってるし・・・。
やっと鳥居が見えた。そして、その下に見慣れた姿を見つけた・・・でも・・・