第14章 summer memory⑨
しゅん、と肩を落とす母さん。
「だって・・・こんな高価なもの・・・」
きっとさっきからこの攻防は繰り返してるんだろうな。お互い疲れ果てている。
「明日の夏祭り、一緒に行くんでしょう?」
「ん?まぁ。俺は交流イベントしてからだけどね」
明日は夏休み最後のイベント、夏祭り。俺のチームは毎年地域の人との交流を深めるためにみんなで神輿を担いだりする役割がある。それ終わってから、りおと待ち合わせして、こっちに来て初めての宮城の祭りを一緒に回る約束はしてた。
「これ着て行けばもう間違いないわ!」
一体何が間違いないのかわかんないけど、母さんはこれを着たりおを見たいらしい。
りおはちらっと、俺を見る。
「だから、貰えるもんは貰っときなって・・・」
俺は催促する。
「うーん・・・じゃあ、お言葉に甘えて・・・頂きます!」
「本当!?いやぁー嬉しいわぁ!」
遂にりおが折れてくれたことが嬉しくて、母さんは飛び上がる勢いで跳ねた。
「叔母さん着付けできるから、明日、早速着ましょうね!ね!」
そういうと、髪型はどうするとか髪飾りは家にいいのがあるとか、勝手に話を進めていってる。ほんと、成人式の時みたいなはしゃぎよう。こうなると母さんは手に負えない。
「観念して、明日は母さんのきせかえ人形になりなよ」
ぼそ、っとりおの耳元で言うと、りおは苦笑する。
「ほんと、いいのかな・・・」
りおの小さなため息を聞いていたのは、俺だけだったーーー・・・