第14章 summer memory⑨
《summer memory⑨》
お盆が過ぎて、暑い夏もあと少し。
近所の子供たちは夏休みの宿題に追われる頃で、俺も昔は夏休みギリギリまで何にも手つけてなくて、岩ちゃんに頼み込んで泣く泣く移さして貰ってたなー。
二人で同じ所間違えまくってたから、学校で先生に一緒に怒られたりしてたなぁ・・・
そんな幼い日々を、自室の天井を見上げながら思い出していた俺をーーー・・・
「えーっ!!」
りおの絶叫が現実へ引き戻したーーー・・・
「無理です無理です!叔母さん流石に貰えませんよ!」
今週は土日共にオフで、土曜日ののんびりした昼下がりを堪能していたのに、なんなの一体。
少し不機嫌な気持ちで、リビングの扉を開けた。
「・・・なに。どうかしたの?」
見ると、ソファーの前でりおと母さんがいて、その間に何か風呂敷が置いてある。りおは困ったように眉毛を下げて、低い物腰で母さんに何か訴えていた。
「あら。いいのよ〜、知り合いの人のお店で買ったものだし、安いのよ。」
「いや、こんな上品な布だし、お安いわけないです!頂けませんよ〜」
俺に気付かず二人は攻防してる。どうやら、風呂敷の中身はりおにとっては高価なものらしくて、母さんはそれをあげたくて、りおは受け取れず困っているみたい。
「りおちゃん、いつも美味しいご飯作ってくれるだけじゃなくて、家事もしてくれて叔母さん本当に助かってるのよ。そのお礼も兼ねて、ね?りおちゃんに着てほしくて買ったから、貰ってくれないと悲しいわぁ〜」
「うっ・・・」
ああー、そう言われるとりおの性格上断れないよね。
すっごい複雑な顔してるりお、面白い。
「何で揉めてんのか知んないけど、貰えるもんは貰っといたらいいじゃん」
「あら、徹」
「お、及川さんまで・・・」
二人はやっと俺に気づいたみたい。俺はその風呂敷の中身を覗いた。
「なにこれ、浴衣?」
少し持ち上げて、柄を見る。紺色の生地に、ピンク色や薄紫の紫陽花のデザインの浴衣だ。
「そう。りおちゃんに着てほしくて買ったんだけど、中々受け取ってくれないのよ〜」