第13章 summer memory⑧
「・・・はい」
「ちょっと、お姉さん・・・"あーん"、は?」
「っもう・・・・・・あーん」
おずおずとりおが口元まで運んだ花びらをパクンと口に入れた。
「花の味がする」
「っ・・・そりゃあ、花だもん」
すぐに手を引っ込めようとするりおの細い手首を掴む。
「はぁい、次は、苺ね」
「まだ続くの!?」
種類様々なフルーツから真っ赤な苺を指してにんまり微笑む。
「だって、花だけ食べるのかケーキも可哀想でしょ?ここの、この苺食べさせてよ」
クイッと顎でケーキの上の一番大きな苺を指した。りおは渋々とまたそれを摘んで俺の口元へ運んでくる。
あ〜、やばいね、これ。
真っ赤に熟れた苺は、口の中で甘酸っぱく弾ける。
「ね、りお・・・生クリームも」
(ごめんねー、俺やっぱり男だからさ、下心が出ちゃうね・・・)
甘えるようにねだってみる。
「え、それこそフォークで・・・」
もう、やっぱりわかってないなぁー。ほんと鈍い。
「指ですくって、食べてさせて欲しいってこと」
ぺろりと舌で唇を舐める。
「えっ!!」
「俺のためのケーキなんだし・・・」
さっき食べた苺みたいに真っ赤になってんのが、暗がりでもわかる。
「いいでしょ、ね・・・?」
あー、たまんない。俺の我儘に困ったように反応する姿・・・
この照れて赤くなった顔、もっと意地悪して見たくなんの、男の性だよね?
「馬っ鹿・・・じゃないの」
そう言い放つりおは、言葉とは裏腹に迷っている。
自分のプライドを優先するなら絶対にしないけれど、今日誰のためにこのケーキを用意したか、考えてるね。
そう。俺のためだよね?ってことは、俺に主導権がある。
「ね?お願い、りお」
「・・・わかったわよ」
りおの細い指がケーキの上の生クリームをすくう。指の腹に乗せたそれを、また、俺の口元まで・・・
(よく出来ました・・・)
パクッと指ごと口に含む。
「・・・っ・・・・・・!」
指ごと、クリームを味わう。舌を這わして、りおの顔を覗き見る。
すると羞恥に耐えられないって感じの顔してる。
あぁ、胸がくすぐられるなぁ・・・